着陸の際、空中分解したスペースシャトル・コロンビア号(打ち上げ時)
写真提供:ロイター/共同通信イメージズ

 組織文化が事業の命運を左右する――。そうした認識が日本企業の間でも広まりつつある。だが、社員の価値観や行動様式に深く根ざしたカルチャーを変えるのは容易ではない。

 本稿では、『失敗しない「人と組織」 本質的に生まれ変わるための実践的方法』(小池明男著/BOW&PARTNERS)から内容の一部を抜粋・再編集。事故を繰り返す組織に共通する思考や行動パターンを紹介する。

組織文化が組織を壊すとき

失敗しない「人と組織」』(BOW&PARTNERS)

 事故や不祥事が起きると、ミスを犯した「人」や、設計などの「技術」に原因を求めがちですが、近年は、さらに背景にある「組織」への注目が集まるようになりました。 事故や不祥事発生の原因としての組織要因を分析すると、必ずしもその組織固有の問題ではなく、多かれ少なかれあらゆる組織に共通する文化面での問題であることがわかります。

■ 組織事故の概念の誕生

 事故の原因究明には、エラーを犯した人的な要因や、設計ミスなどの技術的な要因に着目するのが伝統的な考え方でした。しかし、近年は、大規模プラントや航空、宇宙分野など、高度に技術化された複雑なシステムで、しばしば大事故が発生するようになり、その原因を解明しようとすると、組織の風土や文化、マネジメントなど、さまざまな「組織」要因が複雑に重なっていることがわかります。

 そこで、これを「組織事故」と捉える考え方が、心理学者であるマンチェスター大学のジェームズ・リーズン教授から提唱され、通説になっています。前のページの〈次ページ図1〉は、これを表したものです。

 この組織事故や組織要因に関する知見は、安全分野に限らず、広く一般の組織文化を考える上でも、とても示唆に富みます。たとえば、「事故」を「不祥事」に置き換えれば、技術分野に限らず、サービスや事務部門にもそっくり当てはまる考え方になります。