なぜ、悪いこととわかっていてもやめられないのかWaitForLight/Shutterstock.com
組織文化が事業の命運を左右する――。そうした認識が日本企業の間でも広まりつつある。だが、社員の価値観や行動様式に深く根ざしたカルチャーを変えるのは容易ではない。本稿では、『失敗しない「人と組織」 本質的に生まれ変わるための実践的方法』(小池明男著/BOW&PARTNERS)から内容の一部を抜粋・再編集。不正による事故を未然に防ぐためのヒントを紹介する。
ルール逸脱を正当化する心理特性
『失敗しない「人と組織」』(BOW&PARTNERS)
悪いことと知りながら、「これくらいなら大丈夫だろう」などと、間違った行動を正当化するくせ(認知的不協和の解消)が、人間心理にあります。その結果がうまくいくと、その成功体験により、ルール逸脱が日常化し、それが無意識の当たり前の考え方になります。それが共通の組織文化に定着し、事故や不祥事の温床になります。
■ わかってはいるけど、やめられない理由
① 近道行動
悪いこととはわかってはいるけれどもやめられない、不安全行動という意図的なルール逸脱。そのメカニズムについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
問題を解くカギが、労働災害を招く人間の行動特性の一つの「近道行動」にあります。
近道行動とは、時間や手間を省くため、少々、リスクがあっても、本来行うべき手順や工程を怠ることです。
決められた経路では遠回りになり面倒なので、時間と労力節約のためにリスクを冒して、道路ではない他人の敷地に立ち入り、近道をするというのが典型です。〈図6〉
図6:近道行動







