
いま、北海道・ニセコ地域には外国人富裕層が押し寄せ、地元住民も手が出ないような高級食材が飛ぶように売れているという。都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家の谷頭和希氏は、こうした「特定の場所がテーマパークのようになる現象」を「ニセコ化」と名付け、日本の他の場所でも起きていると指摘する。2025年1月に『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)を出版した谷頭氏に、ニセコ化が各地で見られるようになった背景、東京ディズニーリゾートにも見られるニセコ化の動きについて話を聞いた。
空間づくりとマーケティングの手法が生んだ「ニセコ化」
──著書『ニセコ化するニッポン』では、特定の場所がテーマパークのようになる「ニセコ化」が日本各地で見られるようになったと書かれています。そもそも、なぜこのような現象が見られるようになったのでしょうか。
谷頭和希氏(以下敬称略) 2つの要素があると考えています。
1つ目は「テーマパークにおける『空間づくり』」です。テーマパークとは非日常空間の創造を目的に、施設のつくり込みと運営が統一的に行われているアミューズメントパークを指します。こうした空間づくりの手法が業界や地域の垣根を超えて広がってきたことがニセコ化の背景にあると考えています。
2つ目は「マーケティングやブランディングの手法が生み出した『選択と集中』」です。マーケティングとは「ある商品を顧客に買わせるための方法・戦略づくり」を指し、ブランディングとは「ある商品の価値について、消費者にブランドイメージを認識させ、競合との差別化を図る戦略」を指します。
マーケティングとブランディングは密接な関係にあります。顧客にとって「このブランドじゃないとだめだ」という状態をつくらないと、企業は生き残れないからです。
この2つの要素が合わさった背景にあるのが、2010年代に起きたスマートフォンの普及です。消費者が「自分の好みに近いもの」を容易に探せるようになったからこそ、企業は世の中に大量にあふれる情報の中から「顧客にマッチするもの」を提供し、深くはまってもらう必要性が出てきました。