
今や半導体は経済安全保障の要であり、各国が自国での開発・製造に注力している。水平分業化された半導体産業において、足元ではファブレス(設計)の米エヌビディアとファウンドリー(製造)の台湾TSMCが大きくリードしているが、技術進化は早く、勢力図がいつ一変しても不思議はない。本稿では『日台の半導体産業と経済安全保障』(漆畑春彦著/展転社)から内容の一部を抜粋・再編集。世界の半導体産業と主要企業を概観するとともに、日本の半導体開発の最前線に迫る。
ゲーム機向けGPUメーカーから、AI半導体メーカーのトップへと爆発的成長を遂げたエヌビディア。破竹の勢いはどこまで続くのか?
米国の大手半導体企業

■ エヌビディア(ファブレス)
米国のエヌビディア(NVIDIA Corporation)は、米カリフォルニア州サンタクララに本社をおく、米国を代表する半導体ファブレス企業である。
創業時よりゲーム機向け画像処理半導体(GPU)に強みを持ち、1990年代後半に画像処理半導体の設計で業界最大手になった。エヌビディアのGPUは、2010年代に入る頃にはサーバー、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けとして注目されていたが、2016年頃に起こったディープラーニングブームでGPUへの需要が高まったことが、同社が爆発的に成長する契機となった。
そして現在、エヌビディアのGPUは、データセンター、自動運転向けなどAI時代の社会システム、インフラには不可欠と認識されていることから、AI半導体としては世界シェアの9割を占めている。
エヌビディアの2024年1月期通期の売上高は前年同期2.2倍の609億2200万ドル、営業利益は7.8倍の329億7200万ドル、純利益は6.8倍の297億6000万ドルと、前年から急伸した(次ページ図表2-9)。
2023年5月下旬、2023年5-7月期(2024/2Q)売上高予想が前年同期に比べ64%増(約110億ドル)となるとしたことを受け、エヌビディア株は1日で20%以上急騰した。同期の実際の売上高は、発表時を上回る約135億ドルとなったが、これは前年同期の倍の水準だった。エヌビディアの業績好調は、2023年5-7月期から一段と際立つようになった(次ページ図表2-10)。