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「革新的なデジタルテクノロジーがこれまでのビジネスのやり方を大きく変えた。消費者行動、企業と消費者の関係が革新され、競争環境がこれまでになく複雑化・流動化し、コロナ禍がこうした背景すべての変化を加速した」──連載第1回ではこのことを示し、「なぜ今、マーケティングにDXが必要のか」、その背景について解説しました。

 マーケティングDXは、単なるデジタルテクノロジーの導入ではなく、企業のマーケティング全体を見直し、変革するための重要な取り組みです。デジタルテクノロジーが進化し、消費者行動が急速に変化する現代、マーケティングDXを正しく理解し、活用することが、企業の競争力を大きく左右することになります。

 第2回は、企業がどのようにマーケティングDXの可能性を最大限に引き出すことができるのかを、プレデジタル時代のマーケティングとの4つの違いを明らかにしながら、顧客データの管理・統合から顧客体験のパーソナライゼーション、そして企業文化や組織体制の変革という幅広い観点から探ります。

違い1~迅速でダイナミックな顧客データ収集

 従来、企業が顧客データを収集・管理する手法は限定的で、主に購買履歴やアンケート結果といった静的なデータに依存していました。これらのデータは紙ベースやExcelなどで手作業により整理されることが多く、入力ミスやデータの重複、抜け漏れといった問題が頻発。結果として、正確性や一貫性を保つことが難しく、マーケティング判断に生かすまでに多くの時間と工数がかかっていました。また、リアルタイムで顧客の行動やニーズを把握することは極めて困難でした。

 しかし、マーケティングDXの導入により、顧客データの収集・管理方法は大きく変貌を遂げました。IoT、クラウド、AIといった先端テクノロジーの活用により、データ収集の自動化が進み、リアルタイムで多様なデータが取得・整理できるようになったのです。これにより、手作業で発生していたミスが大幅に減少し、情報の一貫性と正確性が向上。企業は瞬時にデータを分析・活用できる体制を整えられるようになりました。