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 「リテールDX講座」では、リテールDXをビジネスモデル・イノベーションと捉え、ビジネスモデルを構成する6つのブロックについて、各回1ブロックを取り上げています。

 第6回は、ビジネスモデル・イノベーション。この講座でこれまで取り上げてきた4つのイノベーション、すなわち、「顧客関係の構築・維持に関わるカスタマーリレーションシップ・イノベーション」(第2回)、「顧客への価値提供や顧客との価値共創に焦点を当てたカスタマバリュー・イノベーション」(第3回)、「組織の業務オペレーションの効率化を実現する業務プロセス・イノベーション」(第4回)、「収益を上げる仕組みに関わる収益フォーミュラ・イノベーション」(第5回)は、今回のビジネスモデル・イノベーションのパーツとして位置付けられます。

 経済産業省によるDXの定義にも見られるように、DXは単なるデジタル技術の導入だけでなく、ビジネスモデルの変革を含むという視点が重要です。そして、このビジネスモデルにイノベーションを引き起こす推進力として、ここではダイナミック・ケイパビリティに注目します。ダイナミック・ケイパビリティとは、組織の資源や能力を動態的に組み替え、組織や活動を変革するメタ(上位)能力を意味します。

 そのダイナミック・ケイパビリティとして、マーケティング・ミックスや企業内外の組織や活動の再調整を図る「調整ケイパビリティ」、チャネルや業務オペレーション、サプライチェーンなど統合的に管理する「統合ケイパビリティ」、そして顧客、販売、サプライチェーンといったデータを解析し、業務効率化と顧客体験の向上を図る「分析ケイパビリティ」を取り上げました。

 今回のポイントは、①DXの成否を分けるのは、ビジネスモデルのイノベーションにまで踏み込めるかどうかであること、②ビジネスモデルのイノベーションをもたらす組織能力(ダイナミック・ケイパビリティ)の重要性を理解すること、そして、③DXは、D(デジタル化)によりX(変革)をもたらすと捉えること、です。

 最終回となる第7回は、DXがもたらす競争優位について解説します。

小樽商科大学 近藤公彦
神奈川大学  中見真也