
資生堂で「SHISEIDO MEN(シセイドウ・メン)」「オイデルミン」などの化粧品ブランドを手がけ、現在は「IPSA(イプサ)」のクリエイティブディレクターを務める工藤青石氏。あらゆる領域のクリエイティブに携わってきた工藤氏が考える、ブランドを形づくるデザインとは? 本稿では、『デザインをつくる イメージをつくる ブランドをつくる』(工藤青石著/宣伝会議)から、内容の一部を抜粋・再編集。デザインや制作ディレクションにおいて求められる考え方、ロジックについてひもとく。
工藤氏が三越のお中元・お歳暮のビジュアルディレクションを手がける中で、メッセージを効果的に伝えるために立てた三つのロジックとは?
ビジュアルは概念を視覚化する

物や空間など媒体としてそれぞれ持っている特性があるように、ビジュアルにはビジュアルの特性でしか伝えられない要素があります。ビジュアルは直接的に強烈な印象を残します。視覚的にキャッチした情報は、良くも悪くもなかなか忘れません。とても感動した美しい絵も、気持ち悪い不気味な絵も、一度見たら記憶に残り、何かの拍子に思い出したりするものです。
ビジュアルには言葉のような断定性はありませんが、ある方向にイメージを牽引する力が抽象性と共存しているように思います。
例えばポスターのビジュアルは、コピーを伴うと伝えたいことが明確化しますが、言葉がないと抽象度が高くなります。しかし抽象度が高いからといって、何を伝えたいのかまったくわからないというわけではありません。
もちろん完全に抽象的なビジュアルもありますが、抽象的とはいえ何らかの具象性を持たせて表出することもできるので、私がビジュアルをつくる時は知覚的に働きかけることと感性的に働きかけることのバランスをどのように取るかを考えることが多いです。
では、商品やメッセージを伝える上でビジュアルが果たす役割について、事例で具体的に説明しましょう。