
資生堂で「SHISEIDO MEN(シセイドウ・メン)」「オイデルミン」などの化粧品ブランドを手がけ、現在は「IPSA(イプサ)」のクリエイティブディレクターを務める工藤青石氏。あらゆる領域のクリエイティブに携わってきた工藤氏が考える、ブランドを形づくるデザインとは? 本稿では、『デザインをつくる イメージをつくる ブランドをつくる』(工藤青石著/宣伝会議)から、内容の一部を抜粋・再編集。デザインや制作ディレクションにおいて求められる考え方、ロジックについてひもとく。
ブランドをつくる際には、ビジュアルだけでなく「言葉」も重要だ。ブランド名に関して特殊な成り立ちを持つ「シセイドウ・メン」の事例を基に、“廃止されづらいブランド”をつくるためのヒントを探る。
“なくしづらいブランド名”をつくる
――「SHISEIDO MEN」

資生堂の男性向けスキンケアブランド「SHISEIDO MEN(シセイドウ・メン)」は、2003年の発売以来、世界各国で販売されているグローバルSHISEIDOブランドの一つです。
一般的に商品ラインのブランド名は、「ウーノ」「エリクシール」「マキアージュ」のように、SHISEIDOとは異なる名称をつけるのが通例です。
SHISEIDOは資生堂の商品を総括するブランド名であり、商品ラインのネーミングはその一つ下のレイヤーに位置づけられるためです。つまり、SHISEIDOの名をそのまま冠した「シセイドウ・メン」は、商品ラインのブランド名としては特殊な成り立ちと言えます。
では、なぜこの名前になったのか? その説明をする前に、まずプロジェクトの背景について簡単に触れておきたいと思います。
「シセイドウ・メン」のプロジェクトは、当時の社長・池田守男氏からのトップダウンでスタートしました。その頃の資生堂は、「ウーノ」など若い男性向けのカジュアルなブランドはありましたが、高級なメンズラインはありませんでした。池田社長は拡大しつつあった男性用化粧品のグローバル市場を見据え、その中でプレステージブランドのポジションを狙える商品を早急に開発する必要があると考えたのです。