経済同友会 委員長の伊藤穰一氏(左)と鈴木国正氏(右)撮影:榊水麗

 経済同友会 企業のDX推進委員会は、2024年10月に「『Cyber Security Everywhere』時代」と題した提言を公開した。サイバーセキュリティの必要性と行動指針をまとめた文書は、企業向けの8つのアクションプラン、政府に向けた6つの提言で構成されている。この時期にあえて、セキュリティへの取り組み指針を文面としてまとめた背景、込めた思いを、策定を主導した同委員会委員長の伊藤穰一氏(千葉工業大学学長)、鈴木国正氏(インテル日本法人会長)に聞いた。

サイバーセキュリティの脅威は社内外に拡大している

――経済同友会の企業のDX推進委員会は、2024年10月に「『Cyber Security Everywhere』時代」と題した提言を発表しました。なぜ、このタイミングで提言を発表したのでしょうか。

鈴木国正氏(以下・敬称略) DXは今では当たり前に使う言葉ですが、デジタルの活用が目的ではなく、企業自体を変革することが目的です。本委員会は、私と伊藤さん、そして上野山さん(PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也氏)の3人が委員長を務めており、会員企業を集めてビジネスとデジタルの関係について議論したり、デジタルによる変革を実現している企業を招いて講演をお願いするなど、約2年間活動してきました。

 議論を深めていくと、企業を変革するために重要な課題がいくつか見えてきました。その1つが、ここで取り上げているサイバーセキュリティでした。サイバーセキュリティなくしてDXは語れないという認識の下で、日本と米国で専門性を発揮して活動してきた伊藤さんを中心に、提言をまとめたというのが今回の発表の背景です。