同社は、業態を転換し、アーケードゲームを小型化し、ポータブルゲーム機、家庭用のテレビゲーム機を開発した。面白いことを増やすことが自社の存在意義であるという明確なコンセプトの下、同社はテレビゲーム事業での成長を目指した。

 世間が驚くようなユニークなキャラクターを生み出し、のちに人気シリーズとなるゲームソフトを発表した。他社にソフトの製造を委託することで、ゲーム(ソフト)を増やして多彩なラインナップとし、常に新しい遊びを提供した。そうすることで、ユーザーに飽きられてしまうことを避け、ゲームにどっぷりと浸れる世界を目指した。

 周囲がゲームを楽しむ姿を見て、自分も同じ体験をしたいと、ゲーム機を欲しいと思う人も増えた。面白いゲームを満喫したいという欲求は万国共通だろう。群集心理の高まりとともにゲーム機やソフト、関連グッズの売り上げは増加し、同社は世界有数のゲーム会社に成長した。

 このように世界的なヒットやブームを巻き起こしている企業は、需要をつかむためにコンセプトを明確化していることが多い。いったん需要という鉱脈を見つけると、イベントの開催や他業種とのコラボ企画によって、自社商品と消費者が触れ合う場を増やしていく。キャラクターの魅力を活かすため、映画などを活用することもある。

 コンセプトを明確化することは、消費者にとって選択肢が多すぎて選べないという状況を避けることにもつながるだろう。需要が生み出されると、各種のマーケティング戦略を実行して、人々に自社製品への憧れを抱かせ、群集心理を刺激する。

 成功している企業ほど、行動経済学の理論を実践していることは多いと考えられる。さらに行動経済学の主要な理論を学ぶことで、消費者側からも考えることができ、企業のマーケティング戦略からあなたの身を守ることにもつながっていくのだ。

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