それを私たちが押しとどめる。提案された解決策は、実行に移す前に、試験的に導入したり、修正を加えたりする必要がある。すばらしい解決策のように思えても、実際には役に立たないという可能性が常につきまとう。潜在的な危険性を伴うものもある――歴代の医師たちが好んで行なった過度の瀉血が、まさにそうだった。
これらのアイデアを、小さな規模で社内に試験導入し、その結果を上層部に報告するのを支援する。再び会議を開いて、実施可能性について検討するが、今度はゼネラルマネージャーを交えて話し合う。こうした手順を踏んでようやく、そのアイデアが実行に移される。
このような会議を設置しても、既存の業務に支障を来すことはない。月に数時間ほど、上層部に管理されない場を作ることによってしだいに、重要な課題と有効な解決策がプールされていく。
そして、上層部がこの仕組みをよく理解して、問題検討会議に自律性を与えてくれるようになれば、もはや外部の調整役は不要となる。管理職が定期的に集まって、新たな問題を取り上げ、その解決策を探っていけばいい。こうして管理職会議は持続可能なものとなる。
本質的に、こうした仕組みの目的は、従業員の個人的経験に秘められた創造性を解き放つことにある。従来型のライン組織やサイロ化された組織から一時的に抜け出すことによって、管理職の面々は、自部署や他部署が直面している課題を、新たな角度から考えられるようになり、また、仕事や仕事以外での過去の経験と、そうした課題との意外なつながりに目が向くようになる。
このような会議の価値は、通常業務を受け身でこなすことで習得したスキルに由来するのではない。社内の各部署から集った同僚たちの多様なアイデアや問題意識に刺激されて、自身の経験を新たな視点から捉え直す機会によってこそ、こうした会議は価値あるものとなる。それは簡単ではないが、できないことではない。
<連載ラインアップ>
■第1回 ハリー・ポッター、グーグル検索、GUI…革新的なアイデアは、なぜ最初は無視されてしまうのか?
■第2回 ブラジャー、マジックテープ、新幹線…開発成功の鍵となった「ある共通点」とは?
■第3回 仕事を熟知し、豊富なアイデアを持っているはずの管理職が、なぜ創造力を発揮できないのか?(本稿)
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