こうした管理職は、当然、自部署のことだけでなく他部署の問題についてもいろいろなアイデアをもっているはずだ。ところが、こうしたアイデアを創造的に議論して発展させる場がないために、その可能性を十分に引き出すことができていない。それがすべて、企業にとっての隠れたコストになっている。

 そのような状況のときには、ある会議の設置を考えるのも一つの手だ。メンバーの多様な経験を結びつけ、さまざまなアイデアをオープンに議論できるような時間と空間を継続的に提供するのである。私たちは長年にわたり、それぞれ違った場面で、こうした会議を設置する機会を得てきた。

 基本的な実施要領は次のとおりだ。

 ゼネラルマネージャーに相談をもちかけ、関連部署の中級・上級管理職の会議を招集してもらう。その席で、創造的問題解決のプロセスを改善する必要性を説き、厳密な管理体制のもとで定型業務をこなすだけでは、管理職経験の価値が十分に発揮されないことを説明する。

「御社の重要な事業活動の内側も外側も熟知している皆さんは、さまざまな課題を見つけて解決していく上で最高の人材です――が、正式に認められた『管理職経験』の範囲外では、その潜在的創造力が眠ったままかもしれません」と訴える。するとたいてい、参加者全員がこれに同意する。

 ここで、ゼネラルマネージャーに退席してもらう。これが肝心な点だ。上層部の人間が同席しているままだと、なかなか自由にしゃべれないし、自由に考えることもできない。それどころか、トップが発言したとたんに、他の面々は自分の意見を述べるのをやめてしまう。

 ゼネラルマネージャーが何も言わなくても、そうなることがある。トップの表情やしぐさを観察するだけで、どの意見に賛成で、どの意見に反対かが推測できてしまうからだ。あきれた表情でもされたら、すべておしまいだ。