BCGが支援するプロジェクトでは、人材育成専門の検討グループを立ち上げて、スキルセット(部員共通/職位別にどのようなスキルが調達部門に必要なのか)とキャリアパス(どのようなパスを経て職位を上がっていくべきか)を整理し、現在の調達部員の強み・弱みの評価や不足するケイパビリティの分析を行う。その不足を埋めるために、外部研修を活用したり、社内の育成パスを設計したりするなど具体的な施策を策定している。

 さらに、先進企業ではスキルセットや調達カテゴリー知識を50~100項目程度に細かく分解してKPIを設定したり、社内でのバイヤー認定制度を制定したりするケースもある。リソース・ケイパビリティの課題は、人材不足など現場の課題を解決しながら次段階への布石を打つ必要があるため、人事部門を巻き込んだ取り組みが必須である。

人事ローテーションやキャリアパスにも組み込み、エース人材を回す

 古今東西を問わず企業においては、部門の利益、ひいては部門長自らの評価のために、優秀な人材を手元に置きたがる傾向が強い。しかし、それでは前述のような調達人材が社内で見いだせず、調達部門が育たない。マネジメントには、転換点に立つ調達機能の重要性を改めて認識したうえで、短期的目線でなく中長期目線で調達部門も配属先とした人材ローテーションを企図いただきたい。

 なお、人事ローテーションには、優秀な人材確保以外に、2つの目的がある。1つは、社内でのプロモーションもしくは部門間連携の一環としての役割、もう1つはサプライヤーとの癒着の排除である。

 定期的に人材がローテーションされれば、社内人脈の課題は自然に解消に向かう。人材ローテーションがないと部門横断での取り組みが進みにくく、人材ローテーションが進むカテゴリーにおいては改革が促進される傾向がある。例えばR&D部門からの人材ローテーションによりR&Dカテゴリーの調達戦略が進化する、といった具合だ。

 また、サプライヤーとの癒着の排除も忘れてはならない。当然、同じ部門、チームに長くいることで専門性が蓄積できるという側面はあるが、新興国への進出などを経て痛い目を見た先進企業においては、バイヤーは調達部門内の配置替えを含め、必ず4~5年以内の周期でローテーションが行われている。また、定期ローテーションが行われる前提で、引継ぎや組織知化などの仕組みが織り込まれている。

<連載ラインアップ>
第1回 インテル、IBM、ファイザーほか製薬大手は、なぜサプライチェーンに大規模投資を行うのか?
第2回 最安値が正義ではない、調達部門が直面しやすい「トレードオフ」の3つのパターンとは?
第3回 アマゾンは、いかにして調達における「競争優位性」を築き上げたのか?
第4回 調達業務が高度化する中、日本企業はなぜ専門人材の供給・育成に注力しないのか?
■第5回 CPO(最高調達責任者)設置を基点とした、調達の「経営アジェンダ化」と「ガバナンス構築」のポイントとは?(本稿)


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