③は、調達組織の発足の目的が支出管理の適正化に寄っている場合などに採られるスタイルだ。直近では製薬業界や一部の金融機関においてしばしば見られる。CFOの傘下に置かれることから、調達コスト削減や調達リスクの管理などは進めやすい。また支出の全体像が把握しやすいため管理が漏れがちな間接材もカバーしやすい傾向がある。
一方で、②の対極となるため、生産財市場におけるコミュニケーションの機動性、調達を通じた外部のイノベーションの取り込みや生産・開発部門などのバリューチェーンへのフィードバックがしにくいというデメリットがある。
ただ、いずれのタイプにおいても、全社を横断的に管理する組織としての力に強弱はあれど、CPOがシニアマネジメントの1人として経営陣に組み込まれない限り、それが社員から見て経営アジェンダとして受け止められないことを、経営側には認識していただきたい。
人材の育成を加速させる
日本企業においては、前述のような背景から、専門性の高い調達人材は社内に育っていないケースがほとんどである。首尾よく社外から採用できればよいが、そもそも労働市場に調達人材が出現する可能性はきわめて低く、ほぼすべてのケースで社内の人材を育成することとなる。
また、調達を専門とした外部研修も、残念ながら日本では発展していない。人材育成には一定の期間を要するため、この取り組みに着手する際には、早々に手を付け、当人に積極的に経験を積ませる必要がある。
調達人材のスキル要件としては、分析力と調整力が挙げられる。もちろん、社内の各部門とのコミュニケーションが発生することから、社内ローテーションの場合は出自の部門の業務知識や同部門との人脈も重宝される。
翻って分析力については、供給市場の動向や各サプライヤーの状況、自社とのパワーバランスなど、加えてESG動向や技術トレンドなどについても分析を行い、担当カテゴリーの調達戦略を立案する必要がある。
調整力については、サプライヤーとの交渉のみならず、社内の購買要求部門はもちろん、コスト管理面で予算管理部門、調達システム面でIT部門、さらにはESG推進部門などとの調整も求められる。ただ、このような能力や知識をフルセットで持っている人材はまれであるため、その見込みのある人材を見つけて調達部門内で育成していくのが常道となろう。