さらに、複雑な機械学習アルゴリズムを使用して、A/Bテストを繰り返すことで、継続的に予測の精度を向上させている。
サプライヤーとのパートナーシップにおいても、さまざまな工夫を凝らす。1つ目はサプライヤーの規模に合わせて2つのサプライヤー向けプラットフォームを使い分けている点である。
大手メーカー・ブランド向けには「ベンダーセントラル」という仕組みを提供し、アマゾン主導で価格設定、在庫管理、顧客サービスを行う。このケースではアマゾンがサプライヤーに対して大口注文を発注し、マーケティング・プロモーションを支援する代わりに、相応の値引きを要求するケースが多い。しかし、サプライヤーにとっては値引きを上回る販促効果が期待できるため、大半の大手メーカー・ブランドはこのプラットフォームを活用している。
一方、個人販売者や小規模企業に対しては「セラーセントラル」という仕組みを提供し、販売者側に価格、説明、プロモーションなどの裁量を与えている。このケースではアマゾンは在庫リスクを負わずに商品ラインナップの多様性を高められ、サプライヤーはアマゾンの集客力を生かした拡販が期待できるため、WinWinの関係が築けている。
2つ目は、サプライヤーへの豊富な管理ツールの提供である。上記いずれのプラットフォームにおいても、サプライヤーは売上、在庫、顧客のフィードバックなどのデータをタイムリーに分析できることで、サプライヤー主体の改善活動がきわめて実施しやすい環境にある。
3つ目は、物流・在庫管理の支援である。セラーセントラルに参加する小規模サプライヤーに対して、アマゾンが出荷や返品の処理を代替するFBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)というオプションを提供している。これにより、販売者は物流の手間を減らすことができる。
このように、アマゾンは徹底的な需要予測と、大規模・小規模サプライヤーの双方をカバーするデータを駆使したサプライヤーパートナーシップにより、全世界からの膨大な注文を安定的に捌いている。
<連載ラインアップ>
■第1回 インテル、IBM、ファイザーほか製薬大手は、なぜサプライチェーンに大規模投資を行うのか?
■第2回 最安値が正義ではない、調達部門が直面しやすい「トレードオフ」の3つのパターンとは?
■第3回 アマゾンは、いかにして調達における「競争優位性」を築き上げたのか?(本稿)
■第4回 調達業務が高度化する中、日本企業はなぜ専門人材の供給・育成に注力しないのか?(11月15日公開)
■第5回 CPO(最高調達責任者)設置を基点とした、調達の「経営アジェンダ化」と「ガバナンス構築」のポイントとは?(11月22日公開)
※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。
<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者をフォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
●会員登録(無料)はこちらから