ヒューマンエラーを防ぐしくみはどう作る?

 みなさまの会社には、仕事の品質を向上させる、効率的に推進・支援するなどさまざまなしくみがあると思うが、改めてお考えいただきたい。それらのしくみを構築したのは誰か、さらにそのしくみを運用しているのは誰だろうか、当然、人のはずである。先ほども触れたように、人である以上、ヒューマンエラーの問題は避けて通れない、人である以上、100%ヒューマンエラーがないとは言い切れない。そのような存在がしくみを構築、運用しているのである。

 このように、ヒューマンエラーに起因する事故・トラブルを防ぐための歯止めのしくみを何重にも設定しているはずである。ところが、人がしくみを構築・運用している以上、100%完璧なしくみは難しい、人が何らかの間違いをすることで、そのしくみにほころびがあるかもしれない、そのしくみを人が運用する以上、そのほころびに気づかず、運用するかもしれない、また、しくみを構築した人の意図と違う運用をするかもしれない・・・ヒューマンエラーに起因する事故・トラブルはこのようなしくみの構築・運用の隙を突いて発生するものである。

 このようなしくみのほころびを100%無くすことは難しいかもしれないが、ほころびをできるだけ減らす、ほころびの大きさを小さくする努力が必要であると考える。さらにいうと、しくみのほころびを減らす、小さくするのは誰の役割なのか、しくみを構築する人、運用する人両方、つまり、組織の構成員として、そのしくみに携わる人全員ではないだろうか。

 この世に100%完璧なしくみがないとすれば、どのようなしくみを導入しようが完全な問題解決にはつながらない。それに対抗するには、組織の構成員一人一人がヒューマンエラーへの認識、理解を深め、しくみを構築・運用する中で、それぞれの立場からヒューマンエラーリスクに着目、抽出し、要因抽出・対策立案、対策の試行・実施を繰り返すことが地道であるが着実にしくみをよりよくする策であり、本質的な問題解決につながると筆者は考える。

問題解決への行動変容を促すために

 「ヒューマンエラー防止こそ、最も身近で本質的問題解決につながるもの」の意図を改めてまとめると以下となる。

① 組織の構成員全員がヒューマンエラーへの認識、理解(ヒューマンエラーのタイプ、要因抽出・対策立案視点など)を深める。
② 組織の構成員一人一人が、日常生活であれ、仕事であれ、日頃から、自分自身が起こすヒューマンエラーに興味、関心を持つ。
③ エラー発生の都度、要因追究・対策立案、対策の試行・実施を繰り返し、ヒューマンエラー防止を行うことで、一人一人の基礎的な問題解決力を向上させる。
④ しくみ構築・運用の中で、③の問題解決力を活用し、しくみのほころびを減らす、小さくしていく。

 最近、さまざまなご支援をしている中で、これらのことが必要ではないかと強く感じているところである。全社的にこれらの活動を推進しようとすれば、個々が意識を高め、具体的なアクションを実践することが前提となるが、そのような行動変容を促すためには、経営トップ層の関与が必須であると考える。ぜひ、ご一考いただき、この雑文がヒューマンエラーに強い職場づくりに向けた活動推進の何かの参考になれば筆者としては幸いである。

コンサルタント 
大西 弘倫(おおにし ひろみち)

生産コンサルティング事業本部
チーフ・コンサルタント

安全・安心ものづくりのための製造品質向上や顧客から信頼されるサービスを提供できる業務品質向上、労働安全管理レベル向上をねらいとしたヒューマンエラー防止のテーマに取り組み、ヒューマンエラーに強い職場づくりを目指す未然防止型改善活動のコンサルティングを推進している。共著に『ヒューマンエラーの発生要因と削減・再発防止策』(技術情報協会)など。