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「教育時間捻出」の呪い

 あなたの業務時間のうち、「育成」にかけられる時間はどの程度だろうか?昨今、一人当たりの担当テーマや業務の担当範囲が増えてきており、育成に時間をかけられない、教育のための時間なんてとてもとれないという話は、マネジャーからも現場からも耳にする。

 このような問題に対して、従来の王道アプローチは業務効率化、業務削減、担当の見直し、入口管理といった打ち手であろう。決して悪くはないが、残業に対する価値観が大幅に変わってきたりDXという概念が一般的になってきている中で、もうこれ以上何を改善できるのか、という気持ちになりつつある。

 では、質問を変えてみよう。あなたの業務時間のうち、「成長」にかけられる時間はどの程度だろうか?先ほどの問いと答えは変わっただろうか?育成の目的は成長であるから、育成しなくても成長してくれればよい。

 「育成の時間が取れないから成長できない」という発言をよく聞くが、この言葉に自分たちで呪いにかかってしまっているなあ、と思うことがある。
 
 それはどんな呪いか。

 まず「成長していない」という認識である。どんなに納得いっていない業務だとしても、あるいは似たような業務だとしても、何かの気づきを得られる。気づきがあるということは、成長しているということだ。にも関わらず、「成長できない」と言い続けると、すでにある成長を無視することになりがちだ。もう一つは「成長とは育成の時間がないと生まれない」というバイアスがどんどん強化されることだ。「育成」という特別な時間がないと、本当に成長できないのか?そんなことはないはずである。人材開発の「時間」の側面に着目して見ていこう。