「提案」における悲しいすれ違い

 私がコンサルティングの現場で出会った場面について紹介しよう。

 あるシステム開発会社のチームリーダーは「自分たちのチームではこういうことやりたい、と言っても、どうせ上司から『それは当部門の戦略にどう貢献できるんだ』と指摘される。やりたいことなんてできない」とぼやいていた。

 また、総合電機メーカーの研究員であるメンバーは「会社からは自由でとんだ発想を期待する、と言われているが、提案すると『それは本当に売り上げが上がるのか』などと否定されてモチベーションが上がらない。本当は提案してほしくないのではないか」と、お怒り気味であった。

 さて、皆さんはこの発言にどのような感想をもっただろうか。メンバーの立場でこの文章をご覧になっているか、上司の立場でこの文章をご覧になっているかで受け取り方が変わるだろう。メンバーならば「そうそう、本当にそうだ」と共感するだろうし、上司ならば「そんな甘えたことをいうな」と思うかもしれない。

 私の立場で解釈をすると、上司は自分の立場で必要な質問をしたにすぎないのだが、メンバーからすればそれを否定と受け止めたという単なるすれ違いであり、コミュニケーション不足が原因である思う。

 実際、リーダーやメンバーに上記の解釈を伝え、上司の希望や疑問も受け止めた上で自分たちの想いをもう少し具体化して伝えたらどうか、と提案すると、少しの緊張を伴いつつも、もう一度、上司に自分の想いや企画案を伝えていた。そうすると上司は「どんどんそういう提案をしてほしい」とウエルカムの姿勢を強く見せていたし、相手批判ではなく企画内容そのものに目が向いて建設的な議論ができるようになった。