「自分で考えてよい自由」に気付いていない現場
上記の例にかかわらず、メンバーは「自分で考えていいんだ」ということに気付いていない、と感じることが驚くほどある。
部品メーカーで若手開発メンバー向けのセルフマネジメント研修をしたときに、今後1週間の計画を自分で立ててみてくださいとお願いした。
入社3年目のメンバーはほとんど立てることができなかったので、難しいのか、と尋ねると「上司が計画を立てるので自分では考えられない。来週、どんな仕事があるのかは分からない」と、特に疑問を抱かずに言っていた。
中には、「先輩と議論するときに、こうじゃないかと思って提案するんだけれども、先輩がいつも『そうじゃないんだよな~』って返してくる。答えがあるなら先に言ってほしい」と言っているメンバーもいた。よくよく話を聞くと「先輩の持っている正解は、○○なのではないかと考えて、その○○を言っている」というのだ。実際には存在しない正解を当てにいっているのである。
私は「先輩はたぶんそんなこと望んでないし、正解があるわけでもないと思うよ、間違ってもいいから自分自身の思ったことを伝えた方が、自分の学びになるよ」と伝えた。その後、この方は異動になり、先輩とのコミュニケーションのその後は分からないが、しばらくして再会すると驚くほど自分の意見や考えをいうようになっていた。
よく、管理職層から「メンバーからの提案が少ない」という嘆きを聞くが、コミュニケーションのすれ違いや業務のシステム、仕事に対する思い込みといった、目に見えない誰も意図していないことが、「提案してよい自由」を奪っているということには気付いていない。
そして、逆にそれに気が付けば、実は自分が考えたり提案したりする自由はあるのだと感じられるのである。