Jukebox Dreams代表取締役CEO 和佐高志氏(撮影:内藤洋司)Jukebox Dreams代表取締役CEO 和佐高志氏(撮影:内藤洋司)

 シンプルに商品を消費者目線で見てみれば「売れる理由」も「売れない理由」も見えてくる──。マーケティングの基本をそう語るのは、P&Gジャパンや日本コカ・コーラで「SK-Ⅱ」「ジョイ」「綾鷹」「檸檬堂」など数多くのヒット商品を手掛け、現在はJukebox Dreams代表取締役CEOを務める和佐高志氏だ。2023年12月に初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法 伝説のマーケターが語るヒット商品の作り方』(ダイヤモンド社)を上梓した和佐氏に、数多くのヒット商品を生み出した秘訣や、ブランド再生の極意について話を聞いた。(前編/全2回)

■【前編】社内の反対を押し切ったブランド再生戦略、コカ・コーラ「綾鷹」大躍進の秘密(今回)
■【後編】大ヒットのコカ・コーラ「檸檬堂」、新規参入の成功が競合から歓迎された理由

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マーケティングだけではない、P&Gの「真の強み」

――著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』では、ヒット商品を生むための秘訣や発想法について、P&Gジャパン(以下P&G)や日本コカ・コーラ(以下、コカ・コーラ)での実経験を交えつつ紹介しています。P&Gでは「マックスファクター」「SK-Ⅱ」の売り上げを伸ばし、「ジョイ」「ファブリーズ」の大ヒットを生みましたが、どのような秘訣があったのでしょうか。

和佐 高志/Jukebox Dreams代表取締役CEO

1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。

和佐高志氏(以下敬称略) 私は、P&Gで18年間、日本コカ・コーラで14年間、延べ32年間にわたり外資系企業でブランドマネジメントやマーケティングに携わってきました。

 ヒット商品を生むためには、難しく考えようとせずに「消費者目線で見てみる」ことが大切です。こうしたマーケティングの基本となる考え方は全て、P&Gでの実務を通して学びました。

 P&Gでは、20代のうちに数百億から1000億円規模のブランドのPL(損益計算書)や利益の責任を負う「ブランドマネジャー」を3つほど任されます。これは小さな会社の社長を複数社経験するようなもので、同時に「消費者マーケティングのプロ」としての経験を積むことになります。

 一方で、同社には別の一面もあります。P&Gはマーケティングが強力な会社と思われがちですが、真の強さは「研究開発に携わる人たちの多くがマーケティング思考を持っていること」だと思います。

 紙おむつや生理用品などの紙製品にしても研究開発に力を入れており、かなりの先端テクノロジーが使われています。そうした研究開発部門の人たちと徹底的に議論し、イシュー(課題)と向き合ったからこそ、多くのヒットを生むことができました。