Jukebox Dreams代表取締役CEO 和佐高志氏(撮影:内藤洋司)Jukebox Dreams代表取締役CEO 和佐高志氏(撮影:内藤洋司)

 クリエーティブな発想はいきなり思いつくわけではない。何かと何かを結びつけることでさまざまなアイデアになる──。イノベーションのヒントをこう語るのは、P&Gや元日本コカ・コーラで「ジョイ」「綾鷹」「檸檬堂」などをヒットさせたJukebox Dreams代表取締役CEOの和佐高志氏だ。なぜ、次々とヒット商品を生み出すことができたのか。前編に続き、初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法 伝説のマーケターが語るヒット商品の作り方』(ダイヤモンド社)を上梓した和佐氏に、新たなマーケットを開拓する上でのポイントや、イノベーションの起こし方について聞いた。(後編/全2回)

【前編】社内の反対を押し切ったブランド再生戦略、コカ・コーラ「綾鷹」大躍進の秘密
■【後編】大ヒットのコカ・コーラ「檸檬堂」、新規参入の成功が競合から歓迎された理由(今回)

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必要なのは、消費者にとって「意味のある差別化」

──前編では、P&Gで取り組まれたマーケティングの実例や、コカ・コーラにおけるお茶カテゴリーの再生について聞きました。2007年には3つあったお茶飲料ブランドを、シェア2%だった「綾鷹」一本に集約し、2010年にはシェアを約7倍の15%にまで伸ばしました。この間、どのようなことに注力したのでしょうか。

和佐高志氏(以下敬称略) 購入意向調査を通じて、「綾鷹」はおいしいお茶と認識されていることがわかったので、「それをいかにして消費者に伝えるか」ということに力を注ぎました。そこで実施したのが「綾鷹チャレンジ」シリーズというテレビCMです。

和佐 高志/Jukebox Dreams代表取締役CEO

1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。

 このCMは、製品名を隠した4つのお茶から「急須に入れた緑茶に最も近いもの」を選んでもらう、というものです。「消費者編」や「料理人編」、舞妓さん100人に選んでもらう「舞妓編」を展開しました。このCMで使われた「選ばれたのは綾鷹でした」というフレーズを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 綾鷹がおいしいお茶だからこそ、「どれがおいしいですか?」というデモ(実演)ができれば選ばれる、という確信がありました。しかし、おいしいかどうかは個人の嗜好(しこう)なので、直接的な表現で問うことはできません。

 そこで、「急須の味に近いかどうか」だけを聞きました。急須で入れたお茶はおいしいですよね。そこに一番近いのが綾鷹。つまり、急須のお茶に近い綾鷹はおいしい、という三段論法です。

 元々、綾鷹には「おいしい」「濁っている」という明確なPOD(Point of Difference:差別化ポイント)があったものの、それを高級路線というニッチ市場で展開したことが問題でした。私はこれを「お茶市場のど真ん中」で勝負しました。他製品と値段が同じなのに「おいしい」「濁っている」「100人に聞くと、急須で入れたお茶に最も近いと言われる」、だからこそ「買わない理由はない」というストーリーです。

 競合と差別化することは重要ですが、それが「消費者にとって意味があるかどうか」という点は大切です。せっかくのPODがあっても、わかりづらく、意味のないものでは選ばれません。

 必要なことは、難しく考えることではなく、「消費者目線で見てみる」ということ。それを徹底することが次のヒットにつながります。