コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)において、優良なスタートアップと協業するには「選ばれる企業」でなければならない。自社の魅力をアピールするために、どのような仕掛け・仕組みが必要なのか。日本の代表的ベンチャーキャピタルJAFCOが主催する「JAFCO CVC Summit 2023」のセッション2「スタートアップに選ばれる、自社の魅力の伝え方」では、パラマウントベッドの瀧澤康平氏、TOPPANホールディングスの大矢将人氏、モデレータとしてソニーベンチャーズの鈴木大祐氏が登壇。各社のCVCの強みや、その伝え方について語り合った。
「広範な事業領域」と「ものづくり」を強みとするTOPPANのCVC
日本におけるCVCは2016年頃から急激に増加し、市場規模も拡大してきた。こうした状況下では、優良なスタートアップと協業するためには、企業側が選ばれる必要がある。パラマウントベッドの瀧澤康平氏、TOPPANホールディングスの大矢将人氏、モデレータのソニーベンチャーズの鈴木大祐氏が、スタートアップに自社の強みや魅力を伝える方策や、CVCを通した協業の在り方について語った。
TOPPANグループは紙媒体の印刷事業からデジタルへ移行しながら、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの3つの事業を展開してきた。CVCにおいては2015年にオープンイノベーションについての議論を始め、2016年にベンチャー投資委員会を設置。稟議規定の改定や、外部からのベンチャーキャピタリスト登用など、仕組みを整えてきた。2018年にシリコンバレーに投資担当を配置し、2021年以降は、ベンチャーへの出向やメディア配信、事業部門との人材交流なども行っている。
「当グループの投資目的は大きく2つあります。1つは、当社と補完関係を構築できるベンチャーとの協業。もう1つは、当社にとって非連続の市場やビジネスモデル、つまり少し遠い領域へのチャレンジです」(大矢氏)
同社では日本国内とアメリカを中心に、DX、SX(Sustainability Transformation)領域で、アーリー・ミドルステージに向けて平均1億円内外の投資を行う。その大半はフォロー投資で、協業のための業務提携契約を前提にしているという。デジタル化を背景にITベンチャーが投資先の約4分の3を占めるが、製造業として研究開発系ベンチャーとの協業も行っている。
同グループのCVCの強みの1つは「広範にわたる事業領域」を持ち、多種多様なベンチャー企業に応じた協業設計ができる点だ。具体例を挙げると、保育施設の業務効率化を支援するITベンチャー企業であるUnifa(ユニファ)に、保育園・幼稚園のネットワークを持つグループ企業、フレーベル館との販売連携を提案し、その顧客基盤を販路として活用してもらうといったことだ。
また、もう1つの強みとして大矢氏は「ものづくり企業であること」を挙げる。例えば、IMMUNOSENS(イムノセンス)は体外診断用医薬品を製造・販売する研究開発系のベンチャー企業だが、品質を確保しながら量産する部分はトッパンメディカルファクトリーが担うべく、協業を進めている。