食品スーパーや専門小売店など、約300社のグループ会社を抱える流通コングロマリットのイオンは、グループ企業で雇用する正社員の約45%を女性が占めている。元来、小売業は女性比率が高い業界だが、同社の特徴は女性の管理職比率が約26%と群を抜いて高いところにある。イオンの女性リーダーの育成方法について、同社ダイバーシティ推進室室長の江藤悦子氏に聞いた。
管理職就任を阻む「30歳の壁」
――イオンは女性活躍の推進を経営戦略の柱の1つとしています。2013年の株主総会で岡田元也社長(当時)が「(2020年を目処に)女性管理職比率50%」「日本一女性が働きたいと思える会社にする」と目標を掲げました。現在の管理職比率はどれくらいですか。
江藤悦子氏(以下敬称略) 2023年時点でのイオンの女性管理職比率は26.4%、約9000人が管理職として働いています。2013年は9.7%だったことを考えると、10年間さまざまな取り組みを行ってきた結果が出てきたと分析しています。
イオンは企業買収を繰り返して成長してきた企業で、さまざまなバックグラウンドを持った人たちが活躍できる素地が元々あります。顧客の嗜好が次々に変化していく小売業にとって、男性中心の硬直化した意思決定システムのままでは、市場の変化に対応することができません。多様性豊かな組織は企業の競争力向上という観点からも必要とされているのです。
──女性が働きやすい職場をつくるために、どんな制度を用意していますか。
江藤 大きく分けて「女性のライフステージに合わせた働き方改革」と「女性管理職育成を目的とした独自の取り組み」の2つがあります。前者を実践する理由は至ってシンプルで、女性と男性は人生設計が違う、というものです。男女ともに管理職に昇進するタイミングは30歳以降ですが、女性は30歳前後で結婚・出産という重要なライフイベントが発生します。
基本的に、「女性が管理職を目指したがらない」という課題は、女性の育児と家事の負荷が高いという日本の社会構造によるところが大きいと思います。そこで、イオンでは社員が結婚・出産後も勤務を続けられる体制を整備しているのです。
具体的には、①勤務エリア地制限制度、②「イオンゆめみらい保育園」の設置、③育児勤務制度といった制度です。
①は、結婚・出産後に一つの場所に定住するために、勤務エリアを「自宅から通える範囲内」などに縮小する制度。②は、全国31カ所で運営するイオンの保育園に従業員は優先して子どもを預けることができます。③は、子どもが小学校を卒業するまで子育てを最優先に考えた時間・勤務スタイルを提供するもの、です。
このように、イオンは「女性が育児・出産を機に退職しない職場」をつくるための環境整備に力を入れています。
──女性管理職の育成施策についてはいかがでしょうか。