キャリアマネジメントにおける「学ぶ力」
職業人寿命が企業寿命を上回る時代に

 人口構造の変化や老後期間の長期化、テクノロジーの継続的・加速度的な進展等を背景に、医療や学校、ビジネスを取り巻く環境が変化し続けている。特に、生成AIやIoT(Internet of Things)、ビッグデータの活用など、テクノロジーの進展は目覚ましく、業務効率化や生産性向上が進み、企業の合併や統廃合を拡大させ、企業寿命の短期化(現在の25年程度がさらに短期化)を導くとされている(リクルートワークス研究所、2016)。

 50年程度とされる個人の職業寿命が、25年程度とされる企業寿命を上回ることが前提となる社会では、1つの企業で職位と給与を上昇させ、直線的にキャリアを完結させる従来型のモデルが成り立ちにくくなっている。

 今、ビジネスパーソンに求められるのは、自身の将来を企業に依存するのではなく、一人ひとりが自身のキャリアに主体的・自律的に向き合い、進むべき方向を決める「自律的なキャリアマネジメント」である。自律的にキャリアをマネジメントする人は、働く組織や環境が変わろうとも、汎用(はんよう)性の高いスキルや知識、積み重ねた信頼といったネットワークを駆使して、柔軟に強(したた)かにキャリアを構築しやすいと考えられる。

キャリアと学びの統合

 今日のように変化が常態化する環境においては、個人の職業人生は長くなる一方、スキルが有効とされる期間が短期化し、一つのスキル・経験で活躍し続けることは困難である。そのため、「働くこと」と「学ぶ」ことを統合させ、学び続ける力が一層重要となる。

 また、VUCAの時代にあっては、知識やスキルが陳腐化する速度が高まる。私たちは変化に対応し、かつ変革を起こすために、知識やスキルを習得・向上することにとどまらず、必要なことを必要な時に学ぶ術を身につける必要がある。
※ VUCAとは,Volatility(変動性・不安定さ),Uncertainty(不確実性・不確実さ),Complexity(複雑性),Ambiguity(曖昧性・不明確さ)がより顕在化している時代や社会を称する言葉(経済産業省,2018)

 人がテクノロジーと共存し、職種やスキルを転換させながら、新しい知識やスキルを習得・向上させる。つまり、リスキリングの必要性が高まっており、学ぶ力の重要性は今後も高まると考えられる。それでは、私たちは何をどう学ぶのか? 学んだ後には、それらをどのように活かすのか?

 私たちが長期的、計画的に学び、キャリアとどのように統合させていけばよいのか、次回コラムにてさらに皆さまと深めていきたい。

参考文献
リクルートワークス研究所(2016) Works Report2016 Work Model 2030――テクノロジーが日本の「働く」を変革する―ー

コンサルタント 佐藤 達実(さとう たつみ)

組織・人事コンサルティング事業本部
チーフ・コンサルタント

人や組織の成長を“学び”という観点から伴走・支援します。
“学び”や“学習”は、誰もが経験してきた概念であるが故に、一人ひとりが自分なりの“学習観”をもち、それが当たり前のものとなっています。しかし、その「学習観の違い」が組織の成長を阻害する大きな要素となり得ることには気づきにくいものです。
まずは自身がどのような“観”(学習観、リーダーシップ観、マネジメント観など)を持っているかに気づき、対話を通じて「学び続けるチーム」「学びあうチーム」へと成長することを支援します。昨今はテクノロジーを活用することで、学びの効果を高めることにもチャレンジ中。