サイバーエージェント 採用戦略室 室長/キャリアエージェント 大久保 泰行氏(撮影:今 祥雄)

 創業25周年を迎えたサイバーエージェント。3名でスタートした会社は社員数7000名を超え、日本のインターネットビジネスを代表する1社となった。同社の成長を支えているのは、全社一丸となった採用活動など、他に類を見ない採用への取り組みの濃さである。人事・採用部門の責任者が、同社の採用戦略の現在と未来を語る。

急成長のなかで社員数も急増

――サイバーエージェントは、インターネット広告事業に加え、昨年(2022年)のW杯で話題を集めたメディア事業、スマホゲーム事業など、業容を拡大しながら業績を急伸張させています。成長を支える採用活動の変遷をお聞かせください。

大久保 泰行/サイバーエージェント 採用戦略室 室長 キャリアエージェント

2003年サイバーエージェント入社。2009年インターネット広告事業本部局長に就任。2017年人事本部に異動し、2018年人材戦略本部本部長。2022年より現職。採用から人材抜擢、カルチャー浸透、制度設計に関わる。
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座右の銘:「ファクトファースト」。仕事における全ての基本は、ファクトだと考えている。
注目企業:様々な企業をウォッチするが、特にリクルートは参考にさせて頂いている。また国内のIT大手企業は、互いに意識している存在だと思う。
おすすめの書籍:書籍ではないが、自社広報や役員陣が発信するメッセージは読み込み、理解することを意識している。

大久保泰行(以下・敬称略) 当社はインターネット広告業の会社として1998年に藤田晋が創業し、2000年に当時の東証マザーズに上場しました。私が入社したのは2003年で、広告営業の部署に配属されました。

 当時の社員数は百数十名でしたが、社内に人事部が存在せず、社員の採用は数名の採用チームが進めていました。社員の定着率が低く、1年で3割が辞めていくような状況下、採用活動もカオスな状況が続いていました。

 採用やその他人事的な課題を克服するために2005年に人事本部を新設し、ここから新卒、中途とも採用を拡大していきました。インターネット広告もテクノロジーの時代になり、ブログサービスの「アメーバブログ(現:Ameba)」やゲーム事業などをスタートさせたことで、営業だけでなくエンジニアの採用も開始しました。

 現在の社員数は7000名を超えており、事業のさらなる成長を支えるため年間数百名のペースで採用を進めています。

現場社員が採用にコミット。”仕事”だから本気になれる

――人材獲得競争が激しいなか、それだけの数の人材を獲得できているのは、どんな採用戦略を採っているからでしょうか。

大久保 当社は経営トップが「採用には全力を尽くす」というメッセージを打ち出しており、この旗印の下で、社員全員で採用に力を入れる取り組みが文化として確立しています。

 まず新卒採用ですが、「採用活動は人事部門だけが担当する」という常識を打破しています。当社では、採用人事が現場社員とチームを組み、採用戦略の設計から実行までを一気通貫で行います。これを「YJC(良い人材を・じぶんたちで・ちゃんと採用する)」と名付け、2017年から正式な社内プロジェクトとして実施しています。

 私は自分がまだ営業をしていた2017年にこのプロジェクトに参加しましたが、趣味であるダンスを生かし、関東圏の大学の新卒予定者のうち、ダンサーだけを対象に採用プロジェクトを企画し、実行しました。その結果、2名の新卒者が採用に至りました。こうしたユニークな例だけでなく、毎年、社内でさまざまな切り口によるYJCプロジェクトを立ち上げ、採用の成果につなげています。

 また、当社の新卒採用プロセスでは、インターンシップが大きな比重を占めます。ここでも会社全体で取り組む方針の下、現場の第一線で活躍する社員が2~3日スケジュールを空けて参加します。

 インターンシップでは、実務として通用するビジネス企画を、社員と学生のチームで真剣に議論します。徹底したリアリティの追求によって、学生の体験価値を高め、当社で働く事の解像度を上げることができていると考えます。