スタートアップは自己利益より利他

 グローバル化が進み、インターネットでつながった現代社会は一つの地縁社会です。利他を考慮した取り組みがこの「宇宙船地球号」で始まっていると感じます。

 これまで資本主義がたどってきた、単に利益を追求するような独りよがりの自己利益にフォーカスするビジネスはもう古い。自分さえよければという考えではなく、関係者の利益に配慮しながらこれからの経済社会を動かし、サステナブルに変革する時代を目指す若者が増えているのを実感します。

 利他は今後のビジネスの重要なキーワードになると考えています。

 例えば、利他にフォーカスして事業を展開している企業としてはアウトドア用品のパタゴニアがあります。彼らは生まれた利益は地域に還元することを明言し、株主の利益の追求のみならず従業員や地域の住民といったステークホルダーの利益など、社会的課題の追求もミッションとする企業形態で、ベンチャーキャピタルからも資金調達しています。

行政機関に声をかけるタイミング

 先ほど行政機関を上手く巻き込んで成功を収めた企業が世界中に多く存在すると述べましたが、スタートアップとして社会課題解決にチャレンジするならなおのこと、その課題を共通の課題として抱えている地方自治体(県や市町村の基礎自治体)と一緒に解決するほうがリソースも増え、インパクトある課題解決のためのプロジェクトを共に作れる可能性があります。

 自治体と企業の強みとニーズ、双方の利益を考えて官民連携の計画を提案しましょう。その時に大事な視点は、利他の心でよい前例を共に作ろうと呼びかけることです。「未来に向かって、持続可能な発展のために、日本で初めて取り組むことに協力して欲しい」と熱意を持って呼びかけるのです。

 それにはタイミングも大事になってきます。行政に声をかけるタイミングには主に2つあります。それは予算編成の時期と人事異動の時期です。

 予算編成の時期については、ご存知の通り行政は単年度予算主義(4月から翌年の3月の12か月を1年度とする)で回っています。県の翌年度予算は新年度の6月頃になってから編成作業が始まり、翌年の春の議会で決めます。当該年度の補正予算(予算の余りをどう使うか)は主に国から調整が始まります。夏ぐらいから省庁で調整が始まり、年末には補正予算が組まれます。

 ですから動くとしたら、3月から5月くらいの間に新旧の人事で知り合いを増やし、具体的に話をするのは4月以降。あまり待つ必要はなく、先手先手で攻めることが肝心です。

 また、人事異動の時期については、地方は3月から4月、国は主に7月です。従って、新しいコネクション探しは人事異動のある月の前後の月を重点的に回れば、新旧交代で両方の人脈を得ることができます。

 特に行政の場合、前任者からの引き継ぎがあるので、前任者を知っておくと有利になることもあります。新規事業となると、知事や副知事といったハイレベル層からのトップダウンが効果的です。現場レベルの職員の間でキーパーソン探しをやりつつ、トップに近い人脈へのアプローチを視野に活動することをお勧めします。

How To STARTUP』(あさ出版)
拡大画像表示