パブリックアフェアーズに注力する
このような取り組みを実現させるには、パブリックアフェアーズに注力する必要があります。パブリックアフェアーズとは、政府・自治体や業界団体、NPOとの良好な関係を築いて未来開拓を行う活動です。
特に、イノベーティブな活動は規制緩和や新たなルール作りを必要とします。具体的には、公共政策に影響を与える「ロビイング活動」や、都道府県、市町村、大学などとの産学官連携を通して、イノベーションを支えるそれぞれのステークホルダーたちを巻き込んでいくことになります。
関係する適切なパートナーを早期に巻き込むことは、大きな変革やゲームチェンジをより確実に起こすことにつながります。そのため米国ではロビイング活動が当たり前のように展開されており、それはロビイング活動をしていないと本気度が足りないと思われてしまうほどです。この辺りのがむしゃらさはまだまだ日本には浸透していないので、ロビイング文化を奨励していく必要があると私は感じています。
世界では行政機関を上手に活用することで成功を収めたスタートアップ企業が多数存在します。例えば、シリコンバレーにあるスタートアップ企業の多くは、地元の行政機関と協力して、新しいビジネスの形を生み出し、成長しています。
また、日本においても、2022年に岸田政権がスタートアップ育成5か年計画を発信するなど、政府機関や自治体がスタートアップ企業を支援する取り組みが今後手厚く進められます。有名なスタートアップ関連のイベントとしては、東京都が実施している「Tokyo Startup Gateway」や、神戸市が実施している「神戸市分野特化型インキュベーション事業」などの取り組みが挙げられます。
注目を集める社会課題解決型スタートアップ
私がかつて所属していたCYBERDYNEもそうですが、近年では政府や大企業では手の届かない社会課題を解決するようなソーシャル視点を持ったスタートアップが増えています。このような事業を通じて、経済的な価値・リターンの追求と社会的な価値の追求を同時に行うスタートアップを広く社会課題解決型スタートアップと呼んでいます。
これらは強い想いがあってスタートしているビジネスがほとんどです。また、世界的にSDGs、ESGが広がっている観点から、社会課題解決型が注目を集めやすいというのも事実です。
収益モデルの構築と社会課題の解決の両立を目指して事業を行っている企業は、寄付金や会費で年度単位の事業を運営するNPOなどと違い、株式会社という形態になっていることが多いです。両立が難しい事業を形にし、大型の資金調達、IPOを果たすなど、急成長しているスタートアップも多く登場しています。
社会課題解決型スタートアップは今後、チャレンジしてみる価値のある分野だと言えるでしょう。