2022年5月から6月にかけ、JMAC、JMAM、JMARのJMAグループ三社合同で、日本企業に対し『サステナビリティ経営課題実態調査』を行った。また、調査終了後にまとめた『サステナビリティ経営に関する提言』では、日本企業が取り組むべきサステナビリティ経営として『シン・市民主義経営』という考え方を打ち出した。
ここでは、調査に関わったJMACメンバーによるリレー形式で、調査結果に基づき、日本企業のサステナビリティ経営の現状と実現への具体的なアプローチ、そしてシン・市民主義経営について、お伝えする。
本コラムではまず、調査を行うにあたり、われわれ実態調査に関わったメンバーが、どのように経営のサステナビリティを捉えたのか、お伝えする。
日本企業のサステナビリティ経営のこれまでと現状
実は、サステナビリティ経営の考え方そのものは、そう新しいものではない。長く続く成功企業の研究は、『エクセレント・カンパニー(トム・ピーターズ ロバート・ウォーターマン著)』や『競争の戦略(マイケル・ポーター著)』など、現在も有名なビジネス書の中で、40年ほど前から語られている。
日本においても、百年企業と呼ばれる息の長い老舗企業の研究があったことを覚えている方もいるだろう。
こうした研究では、ビジョンや企業文化、制度などの経営リソースを重要視することが提唱された。ただし、当時のサステナブルは、現在のような環境や社会との共存とは異なり、企業が基本理念を持ちながらも、変化する市場でいかに生き残るかを主眼に据え、保有する経営資源を他社にない独自なものにするといった、競争的な意味合いで用いられていた。
しかしその当時からみて、現在では企業環境は大きく変化した。市場や競合だけを考える時代は終焉し、企業活動が地球環境やダイバーシティ、ワークライフバランスなど、社会的な課題の解決につながることや、グローバルサプライチェーンの中で、取引先や調達先との相互の影響関係やリスクなど、国家や地勢を含めて、より広い範囲を意識しなければならない時代に変わっている。
言うなれば、経済性と社会課題の解決を両立しながら、ステークホルダーと共存して、持続的な経営を行っていく、といったものである。
そして今、変わりゆく企業環境下でのサステナブルな経営に関して、どのような価値観を持ち、どのような企業システムにするべきかなど、多くの企業であらたな模索が始まっている。
ご存じの通り、サステナブルであるということは、現状の維持ではなく、維持のために、中身を常に変化させながら環境に適合していく能力を問われるものである。われわれ人間の体が、毎日細胞を入れ替えリニューアルしていることと同じように、企業のサステナビリティも捉えることができる。
一方で身体のような高い自律性をもち、さらに人間の寿命を超えるような期間、企業を存続させるためには、それなりの意図や仕組み、そして積極的な外部環境への働きかけも要求される。
例えば、ビジョンや行動原理(プリンシプル)による方向付け、外部環境を感度よくモニタリングして統制するガバナンス、組織の自律性を高めるコミュニケーションやオペレーションのデジタルなネットワーク、会社の存在意義に共感し、誇りをもって事業に参画する社員の存在など、考えるべき重要な要素は多岐にわたる。そして、そうした経営要素について、どのように再構成・再配置、いわゆる経営のトランスフォーメーションを進めるのか。
それらを認識し、行動することにより、各企業のサステナビリティ経営の特徴が生み出され、存在意義(パーパス)についても、具体的なかたちとして鮮明になるのではないだろうか。