企業を取り巻く社会環境変化とSDGs

◆MDGsからSDGsへ
 SDGsという言葉は昨今、メディアでも取り上げられる頻度が増えたため、世の中に広く知れ渡るようになったが、もともと、SDGsにはMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)という前身となる国際目標があったのはご存じだろうか。

 MDGsとは、主に発展途上国の課題解決を目的とした、8つのゴール、21のターゲット項目からなる2015年までの国際的な開発目標であり、その取り組み主体は国連や政府であった。『MDGs報告2015』では、「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくせるところまで来た」「MDGsは歴史上もっとも成功した貧困撲滅運動になった」と一定の成果は上げたものの、一方で残された課題も多くある。

 例えば、1990年比較で50%以上増加した二酸化炭素の排出量削減は、先進国の取り組みなしでは達成が困難な課題として残った。この課題以外にも、貧困層と富裕層間、都市部と農村部間などの格差は広がり続け、深刻な格差の問題と貧困層や脆弱な人々が依然置き去りの状況が指摘された。

 このように、MDGs推進で浮き彫りとなった”取り残された人々”は、国や地域の生活レベルとは無関係に、生きる上で必要最低限の生活水準が未達の状態を示す絶対的貧困が発生する、発展途上国だけの問題とされがちである。

 しかし、先進国においても、貧困は国や地域の水準の中で比較して大多数よりも貧しい状態のことを指す相対的貧困というかたちで発生している。そのため、MDGsを継承したSDGsでは、開発の指針として格差をなくす=”誰一人取り残さない”ことを重要な柱と定めた。

 そして、課題解決の対象を先進国も含めた全ての国、つまり地球規模とし、取り組み主体もMDGsの取り組み主体であった国や自治体だけではなく、民間企業や一人一人も含んでいる。

◆企業がSDGsを取り組む必要性とは
 では、SDGs貢献に向けて企業はどのような取り組みをすればよいのだろうか。SDGs貢献に向けた企業の取り組みとしては、国際的なNGOであるGRI、国連グローバル・コンパクト、国際企業で構成される組織WBCSDの3者が作成したSDG Compassの中で方向性やSTEPが示されている。

 しかし、具体的な内容の記述はなく各社に一任されている。2016年1月のSDGs施行当初、各社はこれまで実施してきたボランティア等の既存活動を取りまとめてサステナビリティレポート等でSDGsへの貢献として報告してきた。これらは事業にひも付かない「SDGsウォッシュ」や「なんちゃってSDGs」と揶揄される取り組みであることが多い。

 先に述べたSDG Compassの中では、企業がSDGsに取り組む重要性として、以下の5つが挙げられている。
 1. 将来のビジネスチャンスの見極め
 2. 企業の持続可能性に関わる価値の向上
 3. ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との同調
 4. 社会と市場の安定化
 5. 共通言語の使用と目的の共有


 つまり、SDGsは、世界の共通言語としてステークホルダーと連携しながら、アウトサイドイン視点で社会課題を解決しつつ自社の事業成長の同時実現の契機とするよう促しているのだ。

 冒頭で述べた通り、近頃、メディアでも取り上げられる頻度が増えたため、SDGsという言葉が広く知れ渡った。そして、このSDGsの本来の目的、そしてアウトサイドイン視点での社会課題解決や企業が取り組む重要性も浸透してきた。そのため、最近のSDGsの取り組みにも変化が起きている。