持続可能な社会は貨幣価値だけでは計れない

 持続可能な社会と経済成長は相対する関係にあるという考えがあるようだが、今後は両立させることが当たり前になるだろう。

 そのためには、経済を今の貨幣価値だけでなく、新たな貨幣価値で計測していく必要がある。ここでいう新たな貨幣価値とは、SDGsやESG投資を視野に入れた貨幣価値(ここでは新・貨幣価値とする)のことで、旧来の貨幣価値と分けて考えた方がよいと筆者は考えている。

 これまでの貨幣価値は、計量可能なモノ(財)の客観的な交換価値を表す尺度であった。一方で新・貨幣価値は、モノや財だけでなく、個人の体験や「思い・気持ち」も入った無形的な価値である。例えば、SDGsに関係する企業の取り組みに投資をしたり、商品やサービスの購入で金銭を払う場合、そこにはモノや財以外の価値として、地球や他の誰かを思う気持ちをのせていることになる。

 そうしたお金の使い方したとき、金銭の対価として得るモノ以上の価値を感じ、少しうれしくなるのは筆者だけではないだろう。人の価値観は多種多様なため、決して押し付けるものではないが、この価値のネットワークが広がれば持続可能性が高まり、もっと良い未来になるはずである。

 こうした価値の感覚・感性は社会価値として理解されてきており、昨今では環境・社会・ガバナンスの観点で企業活動を評価して投資するESG投資が伸びている。