ESG投資は「投資家よし・企業よし・社会よし」の善循環をもたらす
ESG投資の伸びを示すデータとして、直近ではないがGSIA(Global Sustainable Investment Alliance) が2018年に取りまとめた「Global Sustainable Investment Review の2018年度版」が公表されている。以下に抜粋する。
・ヨーロッパでは、2016年12.0兆ドルが、2018年には14.1兆ドルに伸長
・米国では、2016年8.7兆ドルが、2018年には12.0兆ドルに伸長
・日本でも、2016年0.5兆ドルが、2018年に2.2兆ドルに伸長
(出典:https://japansif.com/gsir2018jp.pdf)
なお、上記以外のカナダ・豪州などでもESG投資残高は伸びている。
なぜESG投資が伸びているのか。言うまでもなくESG投資とは環境・社会・ガンバンスに配慮している企業を重視・選別して行う投資のことである。評価の観点からみると、ESG評価の高い企業は、事業に対して社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと理解できる。
特に公的年金基金などは、中長期的なフリーキャッシュフロー(FCF)の創出力など企業価値向上が期待できる企業を見極めて選別し、投資リスクの軽減の観点から積極的にESG投資額比率を増やしている。世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資ポートフォリオを組み替え、ESG投資を積極的に組み入れていることは、比較的記憶に新しいのではないだろうか(日本人として、ちょっと安心できる話である)
また、ESG投資については伸長率も高まっており、投資総資産に占めるシェアも大きなものとなっている。以下は同じくGSIAがまとめたデータである。主要国の投資総資産に占める割合が大きくなっているのが分かる。
・ヨーロッパでは、2014年58.8%、2016年52.6%、2018年48.8%と推移
・米国では、同様に17.9%、21.6%、25.7%でシェアを上げている
・カナダでは、同様に31.3%、37.8%、50.6%と伸長
・オーストラリア・ニュージーランドで、16.6%、50.6%、63.2%とシェアを占める
・日本でも、2016年3.4%、2018年18.3%と伸長している
このような傾向から今後もESG投資は増大していくだろう。ESGの活動なくしては、将来の企業の資金調達は成立しにくくなることも想定される。
ESG銘柄には中長期を見据えたものが多く、ESG活動は安定した資金調達・確保のための大変重要な要素になっている。投資家がESG投資を行うことで中長期のFCF創出につながり、企業にとっては安定的な資金調達となり、かつビジネスの機会としてSDGsに取り組むという関係になる。
この善循環が回れば、持続可能な社会が見えてくる。この「投資家よし・企業よし・社会よし」の善循環は、「持続可能な新・三方よし」と言える。