パートナーシップの重要性 -Trade-offとパートナーシップ-
企業がSDGsを起点として既存事業の改革や新規事業創出を進めていく考え方については、先のコラムで述べた(既存事業の改革については第12回、新規事業創出については第13回を参照いただきたい)。いずれの考え方にも共通しているのが、長期の外部環境変化と変化に伴い想定される社会課題を起点として事業を見直す「Outside-In」の視点である。
しかし、企業が実際にOutside-Inの視点で社会課題解決に向けて事業を見直す、あるいは新事業を創造することは難しいだろう。なぜなら、これまでの事業活動の多くは、顧客ニーズを「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」として捉え、それらを追求することが事業の収益になると考えてきたからだ。
そのために、社会課題を中心に置いた場合、事業活動と社会課題解決の間には二律背反、Trade-offが発生してしまう可能性が高い。従って、Outside-In視点で事業を推進するためには、まず事業と社会の間のTrade-offに着目する必要がある。
事業と社会とのTrade-offを解決することが、事業にも社会にも良い、新たな事業となるわけだが、その解決策は自分たちの事業だけでは推進できないことが大半である場合が多い。
例えば、農業生産者が食材を栽培・出荷する場合、作り過ぎが発生する。農業生産者が収益を上げようとすると、より多く栽培し、より多く出荷することが必要である。一方で、ただ数多く作るだけでは、作り過ぎになり、ロス率は増加することとなる。この解決は農業生産者だけの活動では難しく、小売等需要側の「いつ、何を、どれだけほしいか」という販売計画を共有することや、作り過ぎという情報を収集し、近隣で販売する仕組み(市場や直売所が既にあるが)が必要となる。
このように、Trade-offの解決のためには、自然と協働、つまりパートナーシップを構築していくことが必要となる。SDGsの17目標の中にも、最後のNo.17に「パートナーシップで目標を達成しよう」が掲げられている。SDGsの目標に目を通した皆さまはお気付きかもしれないが、17目標の中には手段にも関わらず目標となっているものがあり、その一つがNo.17である(もう一つはNo.9「産業と技術革新の基盤を作ろう」)。これは17目標それぞれを達成するためには、パートナーシップを組む必要がある、ということを強調しているといえる。