間接材は経費の大きな割合を占めているが、手つかずの領域であり、コスト削減の余地は大きい。やればやるだけ成果が出る―。企業の事業活動に必要な“購買品”には、「直接材(直材)」と「間接材(間材)」の大きく2つがある。直材は売上や利益に直結するもの。製造業なら材料や部品が挙げられる。間材はそれ以外の業務に必要なもの。工具や燃料、パソコンや筆記具も含まれる。ヤマハ発動機では、間材のコスト削減をはじめとした「間接材構造改革」に5年前から取り組んできた。現場の反発も起きる中、同社は十分な成果を出したという。具体的に何をしたのか、ヤマハ発動機 調達本部戦略統括部間材調達推進部部長の内山代穂氏に聞いていく。前編では、改革の土台となる仕組み作りの詳細をお伝えする。

※後編「正論をぶつけても現場は動かない、成果につながる鍵の1つは“競争化”」はこちら

間材の購入は、自由な「個人の買い物」状態だった

――なぜ「間材」に目をつけ、構造改革を行おうと考えたのでしょうか。まずはその背景を教えてください。

内山 代穂/ヤマハ発動機 調達本部戦略統括部間材調達推進部部長

1998年ヤマハ発動機入社。直接材の調達バイヤー、調達戦略企画、海外駐在を経て2020年より間接材調達を担当。
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内山代穂氏(以下敬称略) 間材の経費は大きな割合を占めており、一般論ですが国内製造業なら企業の売上の1〜2割に相当するケースが多いと言われています。しかし当社には、特にパソコンや筆記具といった「一般間材」について統括する組織がなく、直材に比べて管理が不十分だったため、コスト削減の余地があると考えました。

――どのようにしてそこに気づいたのですか。

内山 最初のきっかけは、外部コンサルとして関わっていた日本IBMからの助言です。その言葉を基に間材の経費を調べてみると、確かに動いている金額が大きい。一方、買い方についてはほとんど統制されておらず、個人の判断で買い、会社の経費で落としている実態がありました。自由な「個人の買い物」状態だった。例えばパソコンも、現在は部署で統一されていますが、以前は社員ごとにバラバラだったのです。

 直材ではこのようなことは考えられません。私はこの業務に携わる前、直材調達を20年以上行ってきましたが、ヤマハ発動機で使うタイヤやヘッドライトは、必要なスペックを設定してメーカーレイアウトや取引先戦略を固め、随時見直していきます。間材はそこまで戦略的な買い方をしていませんでした。

 コンプライアンスの視点でも「野放しな間材購買」は是正する必要がありますし、私たち調達部門としても直接的な経営貢献を求められるようになっていました。そこで、全社横断の経営課題として間材構造改革を進めることに。それまで1つの課にすぎなかった間材調達部門についても、間材調達推進部を設立しました。2018年のことです。