物流業界の3つの課題についてローランド・ベルガーの小野塚征志パートナーに解説してもらう企画。第2回のテーマはサステナビリティ(持続可能性)への対応だ。

 第1回で取り上げた2024年問題など労働力不足の解消もその一つだが、何といっても大きいのは地球環境問題だ。温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向け、全産業が取り組みを進めている。環境負荷の少ない物流を実現するには物流業界、そしてメーカーなどの荷主はどう対応すればいいのか。今回は物流におけるサステナビリティへの対応策について、CO2排出量削減の視点を柱に小野塚氏に語ってもらった。

CO2排出量の約8%が物流によるもの、決して小さい数字ではない

小野塚 征志//ローランド・ベルガー パートナー

1976年東京都出身。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、構造改革、リスクマネジメントなどをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。近著に、『ロジスティクス4.0』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ』(日経BP)、『DXビジネスモデル』(インプレス)など。

 2015年に合意されたパリ協定で、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みが定められました。カーボンニュートラルの実現は国際的な要請であり、日本政府も脱炭素に向けた取り組みを進めています。また株主や社員、取引先、消費者などステークホルダーからの要請に応えるためにも脱炭素化を進める必要があります。

 脱炭素化の対象は自社で排出される温室効果ガスだけではありません。先進的な日本のメーカーはスコープ1(事業者の直接排出)とスコープ2(他社から供給された間接排出)の算定方法などが確立しつつあり、スコープ3(事業者の活動に関連する他社の排出)への取り組みに向かいつつあります。ですから物流をはじめとするサプライチェーン全体における排出も対象に脱炭素化を図ることが望まれます。

 国立環境研究所のレポートを基に推計・整理すると、日本で発生しているCO2排出量のうち約8%が物流によるものです(2020年、電気・熱配分前・後いずれも)。決して小さい数字ではありません。カーボンニュートラルを実現するに当たって、物流の脱炭素化は欠かせないと言えます。

出所:国立研究開発法人国立環境研究所の「日本の温室効果ガス排出量データ」をもとに小野塚氏が推計
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 その内訳(同、電気・熱配分後)を見ると、ほとんどがトラック輸送によるもので、86.5%に及びます。次は海上輸送で7.9%、航空輸送や鉄道輸送はほとんどなく、倉庫などの物流拠点が3.9%です。国内輸送に占めるトラックの分担率(同)は輸送トン(重量)ベースで91.6%を占めます。ちなみに輸送トンキロ(距離×重量)ベースでは55.2%です。

 1つの荷物を運ぶために必要な(輸送量当たりの)CO2の排出量(g-CO2/トンキロ)もやはりトラックが一番多く、自家用トラックが1215、営業用トラックが216で、海上輸送43、鉄道輸送21に比べ大きく上回ります。

 従って物流のCO2排出量を削減するためには、その大半を占めるトラック輸送の脱炭素化を図ることが必須であると言えます。

「日本の物流におけるCO2排出量」は国立研究開発法人国立環境研究所の「日本の温室効果ガス排出量データ」をもとに小野塚氏が推計。「国内輸送に占めるトラックの分担率」と「輸送量あたりのCO2排出量」は国土交通省の資料からの引用
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