前回、前々回と、DXを推進するためのフロー、「DX3つのドア」について述べてきた。

「第1のドア 可視化のドア」
「第2のドア 全体最適のドア」

 また、前回の「今月の3つのアクション」は、

1.危機感を持つことが大切
2.全体最適化された自社の姿を思い描く
3.アクションプランの策定

 の3点を提言させていただいた。

 トップが感じる「危機感」と、現場のそれとは、恐らく乖離があったことと思う。それを埋めていくことから「全体最適」に向かうきっかけをつくっていただけたら幸いだ。

 いよいよ今回は「第3のドア 新価値創造のドア」について解説していく。

連載
なぜCXが進まない?ものづくりDXを阻む企業に巣くう根深い問題

八子知礼氏は「会社が変わらなければDXは進まない」と語る。DXを進めようとすると、さまざまな障壁が立ちふさがる。だから、CXとDXは同時進行でなければいけない。このシリーズでは「日本の製造業がDXを推進し、新たな商品・サービス・価値を生み、企業改革を行うにはどうしたらいいのか」を紹介する。

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そのデータは他社、他業界にとっても価値があるかもしれない

 「可視化のドア」の項でもお伝えしたが、DXを推進する上では、さまざまなデータを継続的にとっていく必要がある。

 しかし、このようなことをよく言われる。

「八子さん。このデータ、いつまでとり続ければいいんでしょう? 実は、コストもなかなかかさむんですよね~」

 ごもっともである。目的のないデータはその保管にはお金がかかり、経営を圧迫するコストファクターになる。

 ここでぜひ皆さんに持っていただきたい視点が、2つある。

 1つ目は「データを収集する上では、どんな価値を生み出したいかを定め、そのために必要なデータは何か、それはどのようにして収集するか、という順番で考えること」

 2つ目に「収集したデータをもとに構築したプラットフォームは自社だけで利用するのではなく、同業他社や他業界にどのように活用できるかを考えること」

 という視点である。

 特に2つ目の視点で重要なのが、データ収集・活用のためのプラットフォーム構築(投資)から、外部展開/外販(収益)へのシフトが、デジタルを活用した企業の新たな事業の柱を生み出すという発想の転換だ。

 それぞれ、事例を挙げて解説しよう。