今回は製造業のDXにおいて、AIの発展とともに近年、盛んにPoCが実施され、製品もリリースされ盛り上がっている領域である、「品質検査のAIによる自動化」について解説したい。生産工程の最終段階において品質を担保することはいかなるメーカーにおいても必須の要件であることは言うまでもない。だが、その検査工程はベテランによる属人性が高い作業で、人海戦術で目視検査をする企業もまだまだ多いのが現状だ。今回はその課題と解決の方向性を探る。

ものづくりにおける品質検査の重要性

 ものづくりにおいては、設計から生産する工程を経て、出荷の前には必ず、出来上がった製品の品質を検査する必要がある。

(1)多様な手法がある品質検査
 従来から品質検査は試験機や人手により行われてきたが、一言で品質検査と言ってもその手法は実に多様である。決められた試験機を使い、試験結果を数値で評価するものや機能や動作が設計仕様通りかをチェックするもの、製品の表面に傷やゆがみが発生していないかの外観検査、異物の混入がないかの確認など、対象となる製品が電機製品なのか、金属やプラスチック製品なのか、食品やアパレルなのかによっても実に多様な品質検査が存在する。

(2)属人性の集中する品質検査業務
 当該製品を出荷しても品質に問題がないことを保証する、ものづくりにおいて重責を担っていると言っても過言ではない業務が品質管理だ。そのため、多くのものづくりの現場では品質検査や評価部門にその道のベテラン職人が就くことが多いが、その職人は工程にITが配備されるようなことがなかった現場で仕事をしてきた年配者であることが多い。

 品質検査工程もそれが故にシステム化されておらず、目検と手作業と紙への記録による検査であることが多い。システム化されていないということは属人性が高く、そのベテランたちが引退してしまうと検査ノウハウが組織内に無くなってしまうなどの重大なリスクがあることを意味する。

(3)自動化が難しい理由
 金属部品などを大量生産する場合には加工精度や寸法を測定する必要があり、やり方次第では工程のボトルネックとなってしまう。一品一様の生産設備では、動作試験があり、試験手順や動作モードの切り替えによって確認すべきポイントが多数存在している。また、出荷後に人が操作するモノであればなおのこと、人手で検査することが必須となる。

 すなわち、自動化が目的から外れてしまうのだ。センサーやカメラで目視検査を代替することは後述するように、表面的な確認が要求されるようなものづくりの場合に限られる。品質検査の自動化を唱えても一筋縄ではいかないことが分かるだろう。

近年、注目されている外観検査の自動化

 近年、AIの発展が目覚ましく、カメラで撮像した画像から画像識別やパターン認識によってエラー品を生産ラインから除外したり、加工不良を判断するといった取り組みをよく聞くようになってきた。その典型的な例として、製品の外観検査について言及しておこう。