1999年、日本企業として当時珍しかった海外企業との資本提携を断行した日産自動車。社内に仏ルノーからの経営陣・社員が入り、必然的にダイバーシティ(Diversity)が進んだ。以来、日産は一貫して、社員・従業員のダイバーシティ推進の取り組みを続けている。同社専務執行役員でダイバーシティ&インクルージョン担当の井原徹氏は、同社が貫いてきた「ダイバーシティは企業活動の戦略」という考えを強調する。いまや、ほぼあらゆる企業にとって推進すべきテーマとなったダイバーシティの「手本」がここにある。
ダイバーシティは企業の目的ではない
――日産自動車のダイバーシティに対する考え方をお聞きします。
井原徹氏(以下敬称略) 日産自動車において一貫した考えとしてあるのは、「ダイバーシティは企業の目的ではない」ということです。企業としての目的はあくまで、事業の持続的な成長にほかなりません。では、この目的のためになにが大切になるかというと、その1つがダイバーシティです。ダイバーシティは目的を叶えるための戦略として欠かせないものと私たちは捉えています。
――ダイバーシティ推進の経緯は。
井原 私たちの場合、仏ルノーと1999年に提携して以来、否応なくダイバーシティのなかで仕事をすることになりました。前向きかどうか以前に、もうそれでやっていくしかないという状況です。結果として、ダイバーシティは日産のその後の成長の力になったと思います。
社内の仕組みでは2004年、社員に個性や価値観の多様性があることを理解し、それを活用する企業となるため、「ダイバーシティディベロップメントオフィス」を設立しました。以降、ジェンダー・ダイバーシティ関連では、女性活躍推進の取り組みを続けています。女性管理職の比率は2004年の1.6%から、2022年4月には10.3%に高まりました。
ジェンダーともう1つ、日産自動車がグローバルに推進しているのがカルチャー・ダイバーシティです。仕事をする相手が自分と異なる背景をそれぞれに持っていることを理解してもらおうとしています。カルチャー・ダイバーシティには国籍の多様性はもちろん、所属企業の文化の多様性も含まれます。たとえば、日産自動車で働いてきたフランス人とルノーで働いてきたフランス人では、企業文化から来る考え方や仕事の進め方の違いがあります。いまや多くの社員の仕事がグローバルなものとなったため、カルチャー・ダイバーシティは大きなテーマとなっています。