アマゾンのロボットアーム、AIで商品仕分け

 米アマゾン・ドット・コムは22年11月、米東部マサチューセッツ州ボストン市郊外のロボット開発・製造拠点を公開し、商品の仕分けを行うAI(人工知能)ロボットアーム「Sparrow(スパロー)」を披露した。

 箱の中の異なる商品の形や色などを瞬時に認識し、アームの先端で吸い上げて、異なる複数の箱に次々と仕分けていく。商品パッケージはプラスチック製の円筒形ボトルやDVDケースなどさまざまな形、大きさで、ロボットはそれらを個別に認識している(YouTube動画)。アマゾンによれば、このロボットアームは、同社総在庫の約65%に相当する数百万点の商品を扱うことができる。

 アマゾンはこれまで、商品をこん包した段ボール箱などを、荷かごに仕分ける「Robin(ロビン)」や「Cardinal(カーディナル)」などのロボットを開発、導入してきた。だが、こん包箱ではなく、商品そのものを認識して仕分けるロボットはこれが初めてである。

最も困難なのは商品ピッキングの自動化

 英調査会社のインタラクト・アナリシスによると、倉庫に何らかのロボット技術を導入している企業は22年時点で約20%となり、18年の15%から増えた。しかし前述したアポ・ドット・コムやアマゾンのように商品ピッキングの自動化に成功している企業は多くはない。

 倉庫の自動化を進めるうえで最も困難な課題の1つは、さまざまな形状とサイズの商品パッケージを扱えるように、人間の手の動きをロボットに学ばせることだという。

 英ネットスーパー、オカド・グループ傘下オカド・ソリューションズのルーク・ジェンセンCEOによると、同社の倉庫ではまだ大部分の商品が手作業でこん包されている。「5万種に上るさまざまなパッケージの食品をピッキングできるようにロボットをトレーニングすることは大変な作業だ」(ジェンセン氏)

 スイスログ・ホールディングのウォーリングフォード氏は、「現在私たちは、商品をケース単位でA地点からB地点に移動させることについて、うまく自動化できている。難しいのは電子商取引(EC)の注文に合わせ、商品を個別にピッキングすることだ」と述べる。

 インタラクト・アナリシスのルーベン・スクリベン氏は、「現時点において、完全自動倉庫と言えるものはほとんどない。実現までにまだ先は長い」と指摘する。今後10年間における自動化に向けた目標は、人間の作業を支援するための装備を拡充し、生産性を高めることだという。

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