半導体巡る米中の技術戦争

 一方、TSMCは半導体を巡る米中の技術戦争に巻き込まれている。 米国は、国内半導体生産の復活を目指し、先端半導体や半導体製造装置などの対中輸出規制を強化している。

 TSMCは22年12月6日、米アリゾナ州で現在建設中の工場近くで、2つ目の工場の建設を始めていることを明らかにした。総投資額は400億ドル(約5兆4800億円)で従来計画の3倍強になる。同日開催された式典にはバイデン大統領やアップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)などが出席した。バイデン大統領は、TSMCが米国の半導体製造分野で果たす重要な役割を強調した。アップルのクックCEOは「アップルはこの工場の最大の顧客になる」と表明した。

スマホ市場、正念場は23年前半

 CNBCによれば、TSMC の22年11月の売上高はアップルからの受注によって押し上げられた。だが、23年の受注が減少することをアナリストらは懸念している。中国の投資銀行、華興資本控股(チャイナ・ルネサンス・ホールディングス)のアナリストは「TSMCの力量が試されるのは23年前半だ」と指摘している。

 米調査会社のIDCは、23年の世界スマホ出荷台数が前年比2.8%増の12億7030万台になると予測している。22年の出荷台数予測である前年比9.1%減から回復する見通しだが、成長率は低いという。IDCのライアン・リース氏は「世界のスマートフォン市場は23年前半まで厳しい状況が続くと考えている」と述べている。進行中のマクロ経済環境と、それが及ぼす需要への影響を考慮して分析したという。