(写真:AP/アフロ)

 半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は米アリゾナ州で工場を建設中だが、この工場の最初の顧客となる企業は米アップルと米エヌビディアだと、Nikkei Asiaが12月5日に報じた。早ければ2023年末にも世界最先端クラス半導体の製造を同工場で始めるという。

「CHIPS・科学法」で米国に半導体工場誘致

 アップルは、この新工場にとって最も重要な第1陣の顧客となり、その後に画像処理半導体大手のエヌビディアが続くと関係者は語った。TSMCは、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)とその傘下の米ザイリンクスなどの半導体大手とも受託生産の交渉をしている。

 米国では22年8月に半導体の生産や研究開発に527億ドル(約7兆2300億円)の補助金を投じる「CHIPS・科学法」が成立した。TSMCなどはこの補助金を受給することを前提に米国内工場の建設計画を立てた。TSMCのアリゾナ工場では、22年12月6日に製造装置搬入の式典を開催し、これにバイデン米大統領やTSMCの創業者である張忠謀氏、劉徳音董事長(会長)などが出席。この最新の動きは、米国内の半導体製造・開発投資の活性化を狙うバイデン政権の勝利だとNikkei Asiaは報じている。

 TSMCは20年11月、アリゾナ州で資本金35億ドル(約4800億円)の会社を設立すると発表した。工場建設には120億ドル(約1兆6500億円)を投じる。TSMCは当初、この工場で回路線幅5ナノメートルの半導体を製造し、ウエハー生産能力は月産2万枚だとしていた。

最先端の3ナノ半導体を米で製造へ

 だが、米ブルームバーグは22年12月1日、TSMCが同工場で4ナノ半導体を提供する見通しだと報じた。また、米ウォール・ストリート・ジャーナルは22年11月、TSMCがアリゾナ州で2番目の工場として機能する可能性のある施設を建設中だと報じた。投資額の規模は同じく120億ドル程度。こちらの施設では3ナノメートルの最先端半導体を製造するとみられる。