(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役、法政大学大学院客員教授)
日本に決勝点を呼び込む三苫選手のラストパスは、真横からのテレビ中継映像ではゴールラインをわずかに割ってしまったかのように見えた・・・。
12月2日に行われた、サッカーワールドカップ(W杯)グループリーグの日本対スペイン戦。歓喜の決勝点をアシストしたのは「VAR」(Video Assistant Referee:ビデオ・アシスタント・レフリー)と呼ばれる、英国に本社を置くソニーグループ企業が開発・運営する最先端のスマートテクノロジーだった。
ボールだけではなくプレイヤーの動きも「ミリ単位」の精密さと「1/50秒単位」の細かさで解析できる「可視化テクノロジー」。そのおかげで日本の、いや世界のサッカーの歴史が塗り変わったと言っても過言ではないだろう。
「VAR」とはどんな技術か
VARはルール上の定義では「試合とは別の場所で映像を見ながらフィールドの審判員をサポートする審判員」を指す。
主審は<VARのアドバイスに従う>か、<VARへリクエストを進言する>形で、必要に応じてピッチサイドにあるスクリーンを使い、該当するシーンの映像を見たい視点(角度)で確認できる。VARは属人性を完全に排除した「機械の目」だ。
ワールドカップでは2018年のロシア大会から、ホークアイ・イノベーションズの「光学カメラ/映像解析技術」を導入した。会場に設置された複数のカメラの映像を解析し、シミュレーション(自ら転倒してファウルを受けたように見せかける行為)のような狡猾なプレーを排除することを目的としたという経緯がある。