コネクテッドボールによってもたらされた高精度なボール位置のリアルタイム計測機能と、ホークアイ・イノベーションズがもともと保有していた1秒50コマの高速で撮影が可能なハイエンドな光学カメラ技術、さらに関節の位置など1人の選手あたり29カ所の位置を捉えて動きを3次元データ化する映像解析技術を統合させることで、より正確な判断を可能としている。

 コネクテッドボールの位置データとホークアイ・イノベーションズの映像解析データは独自開発されたAIソフトウエアで処理され、判定結果が主審に自動送信される仕組みだ。

 試合では三苫選手の上げた非常に際どいセンタリングボールを田中(碧)選手がゴールに押し込んでから、2分30秒後・・・。日本の得点を正式に認定するホイッスルがドーハのハリファスタジアムに響きわたった。

ロケットの弾道研究を行っていたホークアイ

 VARを開発・運営するホークアイ・イノベーションズは2001年に英国で誕生。2011年よりソニーのグループ企業になった。創業者のポール・ホーキンズ氏はもともとロケットの弾道研究を行っていたという。

 ホークアイ・イノベーションズはクリケットの試合にボールトラッキングの技術を開発したことを皮切りに、スポーツの領域に進出。鮮やかな「なりわい革新」を果たした。

 同社の技術が脚光を浴びるようになったのは2006年。テニスの世界大会で「チャレンジ」という新ルールが採用されてからだ。

 そのルールに対応したのが「イン・アウト判定」(ELC:Electronic Line Calling)である。選手から判定に対する異議申し立てがあると、コートの周辺に設置された複数台のカメラ映像から解析されたボールの軌道やラインとの関係を数秒でCG化して会場内の大型スクリーンに映し出す(1セットに3回まで)。

 ボールのイン・アウトの微妙な判定は、試合の展開を左右する重要な局面で出やすい。プロテニス選手の超高速なボールの軌道を最先端のデジタル技術で正確に「可視化する」スマートテクノロジーは、審判による判定の公平性を担保することはもちろん、スポーツビジネスの世界に大きなインパクトをもたらした。