現在、ホークアイの技術は、サッカーのVARやゴール判定(GLT:Goal Line Technology)、テニスのイン・アウト判定以外にも、ラグビーのTMO(Television Match Official:反則の有無やトライの判定)、野球ではMLBのビデオ判定サポートシステムやフィールド内の投手や打者のプレーを精密に確認・評価するプレー分析サービスなど多岐にわたって利用されている。
(参考)「ホークアイ(Hawk-Eye) 可視化のテクノロジーでスポーツの感動を支える」(ソニーグループのウェブサイト)
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/technology/stories/Hawk-Eye/
ソニーグループの「パーパス」を実現
ソニーグループは2019年1月に「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」という「パーパス」(企業の社会的な存在理由、高い志)を制定した。
ソニーといえば、伝統的に家電やゲーム、映画に音楽、最近では保険や金融、半導体などのハード・ソフト事業の集合体を連想するが、経営トップの代替わりに際して、ソニーグループの「なりわい」の本質は「世界を感動で満たす」ことであると新たな決意表明をしたのである。
今年(2022年)1月4日、「CES 2022」のソニーブースで行われた吉田健一郎CEOによる記者発表に、著者は幸いにして立ち会うことができた。この「パーパス」はプレゼンテーションの冒頭に改めて大きく打ち出され、世界に向けてソニーグループの決意を高らかに示すこととなった。
吉田健一郎CEOは控えめなトーンながら、「この2年間、パンデミックが世界を変え、我々は『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』というパーパスの社会的存在意義を再確認しました」「私たちのあらゆる活動を通じて、同じ興味や関心を持つ人同士がさらに深くつながり、それぞれのコミュニティの中でより絆を強めることができるようにしたいと考えています」と語った。
今回、VARによる、属人性を排除した公平な判定は、サッカーの楽しみ方を革命的に変えた。そして同時に、長引くパンデミックや急激な円安による物価高に苦しむ多くの日本人に大きな感動や明日への希望を与えたことは間違いない。
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」。言葉だけ見れば高邁な理想に聞こえるかもしれない。だが、ワールドカップ開幕をきっかけに短時間で日本人の連帯感が高まり、VARでワールドカップ決勝トーナメント進出を決めた日本代表に沸き立った日本を見ていると、ソニーグループの「パーパス」の意図することが「ストン」と腹に落ちた気がした。