■DX企画・推進人材のための「リスキリング実践講座」(1)はこちら

 筆者は現在、住友生命保険に勤務し、デジタルオフィサーという役職でデジタル戦略の立案、執行を担当している。また、社内外のDX人材育成活動として年間40回以上の講演や研修を実施したり、社外企業数社の顧問としてDXの推進やDX人材育成のサポートをしたりしている。

 この連載はDX企画・推進人材が身に付けるべき「企画・推進の仕事ができる力」の養成を目的としている。DXでは新しいことを学び、それを生かして仕事を行う必要があり、これまでの知識やスキルでは対応できない場合が多い。このため、「リスキリング」を行う必要があり、この連載ではそれが学べる。

 前回は、リスキリングは「身近な事例で学ぶことが良い」ことを、「理解の仕掛け」とともに説明した。今回は、新しいことを学ぶときは、「考えさせる仕掛け」が必要であることを、筆者が行っているマインドセット研修を事例に説明したい。

「D2Cとサブスクリプション」をどう学ぶか

 「D2C」というメーカーが好むビジネス用語がある。また、「サブスクリプション」という有名なビジネス用語がある。この2つはどちらもデジタル時代のビジネスの仕掛け(ビジネスモデル構成要素)としては利用範囲が広い。このため、誰もが深く理解して活用できるように筆者はマインドセット研修でよく出題する。

 この用語が出題されると、受講者はネットで調べて発表する(ちなみに「サブスクリプション」は多くの人が知っているが、D2Cは知らない人が多い。知らない用語ばかり出題すると受講者が自信をなくすので、「知っていそうなものを混ぜる」。これも「学びの仕掛け」の一つである)。

 筆者はこれまで600人以上の人にマインドセット研修を実施してきたが、この2つの用語を出題した場合、このようなレベルの発表が多い。しかし、単にこれを発表してもらうだけでは理解は深まらない。そこで、「考えてもらう」ための質問を行う。この質問の流れが、「考えさせる仕掛け」になっている。

 質問の中身を説明しよう。これは、「自分が経験した事例」であったり、「自分が事業をするならどのように使うか」であったりする。このように「自分の立場で考えてもらう」ことにより、用語が具体的で身近になり、自分の過去の経験に照らして考えるので、受講者にとって理解しやすくなる。

 D2Cの場合なら、「自分が最近購入したD2C事例」を答えてもらったり、購入したことがない場合は「どのような商品なら購入するか」などを聞いたりする。サブスクも同様だ。多くの場合、サブスクは自分で購入しているため、答える難度が低い。そこで、筆者はさらに難度が高そうな質問をする。