■〔シリーズ〕DX企画推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」はこちら

 この連載はDX企画、推進人材が身に付けるべきビジネス発想力の養成を目的としている。DXやデジタルビジネスの成功事例には「ビジネスの仕掛け」がうまく使われているが、本連載では、役に立つ9の「ビジネスの仕掛け」をテーマにビジネスアイデアを発想できる考え方、事例などを解説していく。

 今回のテーマは〈6〉 D2C(Direct to Consumer=メーカーによる流通を通さない直販)である。

 あなたは走ることが好きだとする。ランニングシューズは特に大好きなアイテムで、いつもスポーツショップやネットでランニングシューズの情報を検索し、違いを吟味し、次はどのシューズを買おうか考えている。

 ある日、いつものようにSNSをのぞいていると、すごく話題になっているランニングシューズがあった。これまで全く聞いたことがないブランドでメーカーも知らない。しかし、マラソン界で著名な市民ランナーたちが皆、最高だと騒いでいる。

 あなたは気になってしょうがない。スペックは良さそうだが、価格が高めだ。安く買おうとECサイトを調べるが、どこにも売ってない。どうやらメーカーの自社サイトでしか買えないようだ。サイトに行くと「品切れ中」でがっかりした。でも、予約は可能と書いてある。予約するには個人情報を登録しなければならない。

 でも、あなたはそんなことは気にしない。予約して買えるなら商品到着が遅くても構わない。こんな希少で話題性のあるシューズを持っているなら多くのランナーに自慢できるに違いない・・・。これが消費者から見たD2Cである。

 これを事業者から見ると、D2Cは一般にメーカーが卸や小売業者などの流通(サプライチェーン)を通さずに直接(Direct)、消費者(Consumer)に商品を販売すること目的とする「ビジネスの仕掛け」になる。

 メーカーにとってD2Cはメリットが大きいが、小売りでの消費者・顧客との接点を持ってこなかったメーカーには足りないノウハウも多い。特に注意が必要なのは、消費者や顧客は商品単体の機能で価値を感じるのではなく、体験価値も含めたベネフィットを求めていることだ。これを事例で説明しよう。

売れ行きがいまひとつの「腰に良い椅子」を・・・

 コロナ禍で在宅勤務が多くなり、腰を痛める人が多くなった。これをチャンスと捉えた椅子メーカーの社長が、幾つもの「腰に良い椅子」を作った。しかし、どれも売れ行きはいまひとつだった。腰に良い椅子は他にもたくさんあったからだ。

 困った社長は、自分で考えてもアイデアが思い付かなかったので、社員に考えてもらうことにした。相談した社員は2人いた。1人は大学で人間工学を勉強したAさん、もう1人は50歳代のベテラン社員のBさんだった。