エイチ・ツー・オー リテイリング(以降、H2O)は、阪急阪神百貨店や関西フードマーケット(イズミヤや阪急オアシス、昨年買収した関西スーパーマーケットなどの事業を統合)を傘下に持つグループ企業である。同社は関西圏を主なターゲットにして、百貨店とスーパーマーケットの2本の柱による「関西ドミナント戦略」を推し進めている。

 同社が昨年発表した中期経営計画では、関西圏の「グループアクティブ顧客」数を2030年に1000万人にまで増やす目標を掲げている。そして、顧客とのダイレクトな接点開発と継続的な関係深化をビジネスに結び付けるような「コミュニケーションリテイラー」となることを目指している。

 そのような中で同社はDXに積極的である。今年4月には、経済産業省によるDX認定を受けている。百貨店業界としてのDX認定は、丸井グループに続いて2社目(ただし、丸井は既に百貨店から商業施設事業へ転換)である。

 ここでは、H2Oの百貨店事業(阪急阪神百貨店)におけるDXのOMO戦略と、全社的なデジタル活用の方向性を見てみたい。

【阪急阪神百貨店のOMO戦略】 リモオーダーの導入

 阪急阪神百貨店の「HANKYU HANSHIN E-STORES」は、ファッション、コスメ、フードなど、阪急阪神百貨店で取り扱う人気ブランドの商品を購入できる総合通販サイトである。2017年に、それまでのコスメ、男性用ファッション、女性用ファッションの3種類の販売サイトを統合。その後、デパ地下のフードなども追加した。

 加えて、同社では、OMO(Online Merges with Offline)の仕組みとしてリモオーダー(Remo Order)の仕組みを2020年から展開している。リモオーダーは、店頭の販売商品を(上記のようなオンラインショッピングサイトに掲載されていない商品でも)、店舗に行かずに注文・決済できるサービスである。阪急百貨店または阪神百貨店の店頭で買いとどまった商品や日頃購入している店頭商品などについて、電話・メール・LINEを使って同社の売場に問い合わせると、注文用 URL を発行してくれて、スマホで購入・決済ができるという仕組みである。

 リモオーダーは、特に高度な技術を使っているという感じはしないが、店舗のショールームとしての機能や店舗従業員のコミュニケーション力を生かして、リアルとネットを合わせた販売力を大きく高める効果があると考えられる。

 なお、店頭商品の全てが遠隔決済できる機能に独自性があるとして、リモオーダーに関して「商品販売システム」(特許第7086143号)というビジネスモデル特許が今年6月に成立した。注文自体は顧客自身で行うため、この仕組みにより販売員や事務所スタッフの負担を抑制できるという効果が特許の明細書に記載されている。また、2020年のコロナ禍に出願された特許であるため、この仕組みによって「店舗事業者は、外出自粛が要請されている状況下でも、相応の商品売上げを確保することができる」という効果の記載もある。

 同社は、取得したそのビジネスモデル特許を活用し、事業者向けのソリューションサービスを検討する方針である。関西圏以外の企業に対してであれば、特に競合はないため、そのようなソリューションの外販は問題なく、収益力向上につながることが期待される。