2022年1月、東京きらぼしフィナンシャルグループ傘下の「UI(ユーアイ)銀行」がサービスを開始した。同社は国内で2つ目となるデジタルバンクだ。JBpress/JDIRは22年8月23日・24日の両日、金融DXの実現に必須となる要素を総合的に学び、考察する、「第3回 金融DXフォーラム」をオンラインで開催する。同社代表取締役社長の田中俊和氏はそこで「『UI銀行』が考えるDX戦略について」と題した特別講演を行う予定だ。講演に先立ち、同社設立の狙いや、今後推進しようとするDX戦略などについて聞いた。
<編集部からのお知らせ>
UI銀行の田中社長も登壇するオンラインイベント「第3回 金融DXフォーラム」を、2022年8月23日(火)・24日(水)に開催します!
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フルクラウドでシステムを構築した「デジタルバンク」
―― UI銀行は2022年1月にサービスを開始しました。以来半年あまりになりますが、現在までの進捗はいかがですか。
田中 開業当初はかなり忙しかったですね。特に気を配ったのがシステムトラブルを起こさないことです。新しい銀行として大きく期待をされてサービスを開始する中で、お客さまにご迷惑をおかけするようなことがあってはなりません。ですから、相当な緊張感を持って日々のオペレーションに取り組んできました。幸いなことに、これまでサービスに影響を与えるようなトラブルは発生しておらず、安定的に稼働しています。
―― デジタルバンク開業にあたっては、勘定系システムを含め、フルクラウドを採用したそうですね。従来、銀行は「メインフレーム(大型汎用機)」のシステムが主流でした。フルクラウドの理由はどのような点ですか。
田中 フルクラウドとは言うものの、勘定系はプライベートクラウドですので、閉じたクラウドです。情報系はAWSを利用したパブリッククラウドになっています。
クラウドを利用する理由として、運用コストが抑えられることや、開発期間を短縮できるというメリットがあります。きらぼし銀行は、東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の3行が合併して誕生しました。3行は別々のシステムを使っていたため、これを統合したのですが、一つのシステムにするのに7年近くもかかったのです。社会の変化が激しく、金融慣行もめまぐるしく変わる中で、今またそれだけの時間をかけていると変化のスピードについていけません。何より、お客さまのニーズに応えるサービスを早期に創出できません。
それではいけないと、フルクラウドを採用することを決めました。UI銀行では今回、韓国大手の新韓金融グループの日本法人であるSBJ銀行が提供する「AiTHER(アイテル)」というシステムを採用しました。韓国の銀行という点では外資系ということになりますが、同行はすでに日本で10年以上、全銀システムなどにつないで稼働してきた実績があります。日本独自の金融システムにも対応しており、カスタマイズなども非常に少なく導入できました。