ビーウィズ株式会社 代表取締役社長 森本宏一氏

 ビーウィズは、企業から委託を受けてコンタクトセンター(コールセンター)やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供する会社。各拠点に電話交換機をそろえ、多くのオペレーターが一人一人の顧客からの電話を丁寧に受けるというイメージが強いコンタクトセンターだが、ここにDXを取り入れた。

 今から6年前、いち早く自社開発でクラウド型のコールセンターシステムを利用したコンタクトセンターを立ち上げ、アップグレードを重ねている。そのおかげでコロナ禍には、オペレーターが自宅で勤務する在宅コンタクトセンターで対応できた。どのようにしたら、こうしたことが可能なのか。コンタクトセンターにデジタルをどう取り入れ、どう活用しているのか。全貌に迫る。

コンタクトセンターでもDXが活用できる

――3月2日、東証一部(現・プライム市場)上場おめでとうございます。上場して何が変わりましたか。

森本 社会への貢献度や成長度に対しての期待値が上がっているのを感じます。それと改めてビーウィズ株式会社のデジタルアプローチというものを認知してくださって、興味・関心を抱いてくださるお客さまが増えています。

――コンタクトセンターとDXというのは、遠い関係のように見えますが、どうつながっているのですか。

森本 コンタクトセンターというのは、今までは人を中心とした労働集約型のソリューションで、オペレーターがお客さま一人一人のお問い合わせにきちんと対応するという、人の能力やホスピタリティでサービスが成り立っていました。それを、人とデジタルを組み合わせることで、サービスを標準化し、より付加価値の高いクリエイティブなものに進化・変革させました。

 最新クラウドコールセンターシステム「Omnia LINK(オムニアリンク)」を自社開発したんです。これはクラウド型であるため、インターネット経由でシステムを提供するので物理的なコストがかかりません。さらにAIの自然言語処理を取り入れ、応対内容をテキスト化することでお客さま対応の可視化による生産性の向上が図れます。人のスキルに依存して答えていたのが、答えを共通化し、それをAIに学習させることで、多様な質問の中心になるものをFAQリコメンデーションする。そういう業務支援アプリケーションも開発しましたので生産性が上がり、品質も向上します。野球に例えるとみんなが3割バッターなれるということです。ホームランバッターがいなくても、アベレージヒッターを増やせればチームは勝てます。そうしたOmnia LINKを利用したコンタクトセンターの運営サービスの提供を通じて、企業のビジネスプロセスの変革や、エンドユーザーのCX(カスタマーエクスペリエンス)の最大化のお手伝いをしています。

――どうしてコンタクトセンターにDXを導入しようと思われたのですか。

森本 「お客さまの課題解決」が生業だと考えていますので、構造的な課題をどうすれば解決できるのだろうか、お客さまのご要望に応えていくためにどうしたらよいかを考え、他業界では当たり前に活用しているクラウドやAIを取り入れることで人を生かせるのではないか、課題解決ができるのではないか、デジタル活用できるのではないかと発想しました。しかし、既存プレイヤーのシステム会社に相談してもスピーディに解決できませんでした。そこで、自ら開発ができないかとクラウド型のPBXの電話技術を持った会社にお声掛けし、2016年に子会社に入っていただき、その技術を活用して自社開発を実現できたというわけです。結果的に、この業界の中で自社開発は、ほぼ唯一だと思います。

 Omnia LINKは2016年にスタートしており、2017年にカンファレンスに出したときは、衝撃的だったらしく、たくさんの関係者が集まってくださいました。ただ、「クラウドは時期尚早だよ」というのがマジョリティでした。インターネットは危険だという固定概念があり、情報漏洩するんじゃないかと思われていたんです。実はクラウドの方がセキュリティーは高いんですけどね(笑)

 社内でOmnia LINKを使いながら、高付加価値機能をどんどん追加してアップグレードしていきました。最初は電話機能をクラウド化し、第2フェーズで音声認識や自然言語処理、AIを活用したものをひたすら使い、今、やっと音声認識が世の中から注目され始めました。まさに、市場がついてきてくれたという感じです。誰もが、「グーグル」「シリ」「アレクサ」に、普通に話し掛ける時代ですからね(笑)。まさに今、これからというタイミングだと考えています。