死因(直接原因)の先の犯行動機(根本原因)を探り、対応策を考える

 監督者は自身の担当現場の経営者という意識を持つことが必要である。前の例に当てはめれば、監督者は司法解剖医だけでなく、警察・検察官から行政までの役割を担うことが求められる。

監督者の現場における役割としては、
①次の監督者を育てる人材育成
②現場に対する作業指導
③現場の改善・継続
④ルールを順守させる職場づくり
⑤尊敬される人間モデル

が考えられるが、この中で不具合がなかなか減らない現場に対しては「③現場の改善・継続」に力を注ぐべきであると考える。現場で発生した不具合に対し、応急処置的に直接的な原因に手を打つだけでなく、その事象が発生した仕組みや文化に対して再発防止策を検討・実施していかなければならない。

 根本原因を探る手法としては「なぜなぜ分析」※1や設備系だと「PM分析」※2が一般的に使われているが、昨今、人が要因となるヒューマンエラーに対し、医療業界や電力業界で「RCA(Root Cause Analysis)」が使われている。RCAの実施ステップは、その問題(インシデントやアクシデント)が発生した経緯を時系列で整理し、不具合とヒューマンエラーを見極めた上で、ヒューマンエラーに対し要因解析(なぜなぜ分析など)を行い対策立案・実施へと繋げていく手法である。

※1 「なぜこの事象が起きたのか」という問いかけを繰り返すことで、問題の真因を把握する分析方法。
※2 不具合現象を原理原則で物理的に分析し、発生メカニズムを明らかにする手法。


 ポイントとしては、最初のステップで時系列分析を行った際、ヒューマンエラーは1つだけではないことに着目することである。たとえば、自動車の接触事故を起こした時に信号の見過ごしだけでなく、見過ごす背景となった事象にも着目して原因追及を行う。


 分析対象を設定し、その原因を探り、そう至った構造的な問題(仕組みの問題)に対し、対策を打つことが重要である。 また仕組みや文化の改革は、場合によっては監督者一人では限界がある場合も考えられるため、会社として経営層からのバックアップも含めた、全社一丸となった現場改善・改革を推進していくことが求められる。

 それには現場監督者に対して、人・モノ・金に関する権限委譲をある程度行うことで、よりスピード感ある改革実行と共に、再発防止の改善サイクルの仕組化・定着を図ることが必要である。

コンサルタント 白濱匡晋(しらはま まさくに)

生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センター
チーフ・コンサルタント

生産財、サービス分野における事業戦略立案、ビジネスプロセスマネジメント、品質保証体制構築、SCM改革を専門領域として活動中。経営目標の達成に向けたQCDバランスを適正に保つマネジメント機能を設計することを課題とし、コンサルティング活動を行っている。