プレイヤー兼の「負のスパイラル監督者」が現場をダメにする

 近頃、さまざまな会社の監督者と接する中で、将来に目線を置きながら日常業務もしっかり回す、言わば「両利きの現場経営」を行っている監督者が減ってきたように思う。一方、日常の生産量確保、トラブル対応に追われ、今日どうするかが一番の優先事項であり、その日暮らし的な現場は逆に増えてきたと感じる。

 とある自動車部品メーカーに行った時のことである。会社トップの改善活動が活性化しない、経営効果に表れていないという困り事から訪問が始まり、現場の確認に加え、多くの課長や監督職と話した。

 よくある現象であるが、QCDレベルが高い職場は改善の活動や人材育成も活発で、監督者も「将来どうしたい!」を語ることができる。逆にQCDレベルが低い職場は人材育成も改善も進まない、監督者自らも生産作業に入ることが多く、現状の大変さを語るのがほとんどである。前者を正のスパイラル監督職、後者を負のスパイラル監督職と筆者は呼んでいる。

 正のスパイラル監督者 N係長の職場は、活動ボードを見てその活動と活性度が伝わってきた。1、3、5年後の各年次の現場のありたい姿が、レイアウト図・イラストも使い、「みんなが目指す未来」としてが描かれている。これらはN係長の素案をもとに、職場のメンバーで意見を言い合って追記していったようだ。

 さらには、この未来の現場を目指すため、各メンバーの役割や改善テーマ、今後取得する資格(保全や工作)があり、人財育成計画も個々人でしっかり立てられている。当然、会社方針や課の方針・目標も掲載があるが、それをベースに「自分たちの職場をどうしたい!」が飛び出そうな迫力で記載してある。

 N係長に話を聞くと、「自分は係長になって22名の職場メンバーの命、メンバーと家族の未来も預かっている。だから、よりよい職場として業績を出すことでメンバーも成長し、喜び合えることが重要である。一人一人を主役にし、生産作業だけでなく改善などで活躍する環境づくりが大切」と言っていた。

 活動ボードには、各メンバーに「からくり改善王」など、全員に「・・王」の称号がついていた。また、生産性改善を行っても全てを会社に効果献上せず、一部は次の改善のための投資時間として職場で貯金するとのことである。

 一方、負のスパイラル監督職は、前述の正反対で、職場のメンバーもモチベーションダウンという状況であった。